数年前、サラリーマン時代に買ったのに読まないでいたシェークスピア『マクベス 』(新潮文庫 1969)を読む。
シェークスピア作品は詩集を読んだことがあるが戯曲は初めて。
あらすじは、スコットランドの武将マクベスが王位を狙い、主君のダンカン王を暗殺してその座を奪う。その後、王位を奪われる不安から、次々と殺しを重ねていく。
王位を奪うきっかけとなったのは、3人の魔女の予言と妻のマクベス夫人の教唆。
ただ、マクベスはけっこう小心者らしく、ダンカン王を殺した後、次のような「心の声」を聴く。
「もう眠りはないぞ!マクベスが眠りを殺してしまった」と―――あの穢れのない眠り、もつれた煩いの細糸をしっかり撚りなおしてくれる眠り、その日その日の生の寂滅、辛い仕事の後の浴(ゆあ)み、傷ついたた心の霊薬、自然が供する第二の生命、どんなこの世の酒盛りも、かほどの滋養は供しはしまいに―――
野望のために「安眠」を犠牲にすることができるのか?
出世はしたけど、眠れないほど苦悩する毎日を送らないといけないなら、それは死んでいるのと同じだ。
自分なら、野望なんてどうでもいいから毎日ぐっすり眠りたいな。
サラリーマン時代はマクベスを読もうとして挫折したが、今はスラスラと読める。