アメリカ大統領選挙の候補で、41歳で資産30億ドルを築いた「不動産王」ドナルド・トランプに興味を持ったので、『トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ』(ちくま文庫 2008)を読んだ。
選挙の討論ではすごい失言を連発しているが、本業の不動産投資ではけっこう慎重で冷静だ。
本書では、トランプが手がけた数々の投資案件の取引内容・苦労話がすごく具体的に書いてある。
不動産投資だけでなく「投資」という行為に興味がある人は一読の価値がある。
トランプの手札
トランプ師匠の投資必勝法を11の法則にまとめた「トランプの手札」というのがある。
- 大きく考える
- 最悪を予想して、最高を手に入れる
- 選択の余地を多くする
- 市場を知る
- レバレッジを使う
- 立地の価値を高める
- 自分を宣伝する
- 断固戦う
- 言葉だけでなく実行する
- コストを抑える
- 楽しむ
これらの法則は、投資だけでなく人生にも応用できる深い法則だと感じた。
楽しむ
私にとっては金はそれほど大きな動機ではなく、単に実績を記録するための手段にすぎない。本当の魅力は、ゲームをすること自体にある。
p.82
詳細は本書で。
トランプ自身は根っからの不動産投資マニアだったらしい。
学生時代、同級生たちが新聞の漫画やスポーツ欄を読んでいる時、私は連邦住宅局の抵当流れ物件のリストに読みふけっていた。
p.101
株式投資を好きになりたければ、「3度のメシより目論見書を読むのが好き!」くらいの勢いが必要なのかも。
お前はクビだ!
記事のタイトルの「お前はクビだ!(You’re fired!)」というのは、トランプが作った流行語だ。
彼が出演していたアメリカのテレビ番組で彼が決めゼリフで発していた言葉だ。
番組の内容は、トランプの会社で働きたいと希望する候補者たちが「内定」をかけて課題に取り組むというものだ。
彼が「脱落者」にむかって「お前はクビだ!(You’re fired!)」と宣告する。
本書では「お前はクビだ!」と訳しているが、求職者にむかって発する言葉なので、「お前は不採用だ!」がしっくりきそう。
もっと日本企業的にいえば「ご縁がありませんでした!」となる。
目次
謝辞
1 取引――ある一週間
2 トランプの手札――取引の諸要素
3 生い立ち
4 シンシナティ・キッド――慎重さが利益につながる
5 マンハッタンへ
6 グランド・ハイアット・ホテル――よみがえった四十二番通り
7 トランプ・タワー――ティファニー界隈
8 賭博――ボードウォークのカジノ
9 棚ぼた――ヒルトンをめぐる攻防
10 低家賃の豪華アパート――セントラル・パーク・サウスでの勝負
11 大きな賭け――USFLの興亡
12 ウォルマリン・リンクの再建
13 カムバック――もう一つのウェスト・サイド物語
14 一週間を終えて――取引の結果
訳者あとがき
解説「でっかく考えろ」ロバート・キヨサキ
※本書は1988年に早川書房から刊行。
筑摩書房
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