『「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった―誤解と誤訳の近現代史』 (多賀 敏行(著), 新潮新書, 2004)を読んだ。
「エコノミックアニマル」という言葉は「経済最優先でがむしゃらに働きまくる日本のビジネスマンを欧米人が皮肉った言葉」だと思っていたが、そうじゃないらしい。
ネットの辞書をひくと、
エコノミック‐アニマル 【economic animal】
経済的利潤の追求を第一として活動する人を批判した語。昭和40年(1965)、パキスタンのブット外相が日本の経済進出のあり方について言ったもの。
エコノミック・アニマルの語源
辞書でさえ、「エコノミック・アニマル」という言葉を批判的に捉えている。
ちなみにKindleに搭載されている辞書が『デジタル大辞泉』だ(2013.10.8現在)。
Kindleで本書を読んで辞書をひくと上記の定義が出てくる。
発言者のブット氏は
「自分は決して日本人を侮辱するつもりでエコノミック・アニマルと言ったのではいのに」
と語っていたそうである。
では、どうして「エコノミック・アニマル」が批判的に使われるようになったのか。
ブット氏のある発言の日本語訳が原因らしい。
その発言とは、ブット氏がとある国際会議で日程を延期した理由を記者から問われたときに、
「新聞記者ふぜいの知ったことではない。日本人などは金に飢えた動物で、政治のわかる動物ではない」
と発言した、と報道された。
著者は、「金に飢えた動物」の原文が「エコノミック・アニマル」(economic animal)だったのではないかと推測している。
わたしの推測だが、あまりにも日本の記者の追及がしつこくて、つい感情的になって発した言葉だったのでは?
エコノミック・アニマルは中傷語か
著者が複数のイギリスの知識人に聞いてみたところ、皆「(エコノミック・アニマルという言葉に)侮辱的な意味はない」と答えたそうである。
それどころか「褒め言葉」でさえあるという。
英語で「○○・アニマル」というのは「特定の分野で才能がずば抜けていること」を指すそうだ。
イギリス英語では「○○・アニマル」とは突出した才能を褒める言葉らしい。
よって、「日本人はエコノミック・アニマル」というのは、日本人は経済活動に関してはずば抜けた才能があると褒めているのである。
本書では他に次のような誤訳?が紹介されている。
- 日本人は十二歳の少年(ダグラス・マッカーサー)
- 日本はウサギ小屋に住む働き気違いの国(朝日新聞)
- 日米開戦前夜の暗号電報誤読
- 「グローバル・スタンダード」という言葉は和製英語
などなど。
※意図的に「日本人の感情を害するような翻訳」をして部数を伸ばしたい某新聞社とかあるんじゃないのか。