宮川俊彦『昇格する!論文を書く』(角川oneテーマ21, 2003)を読んだ。
もうわたしの人生で「昇格する!」ための論文を書く必要はないが、文章の書き方には興味がある。
本書は、組織でのし上がっていくための論文力を身につけたい人には大いに参考になる。
実力はあるのに論文力がないために昇進できないのは、もったいない。
論文の点数でふるい落とす
企業の論文活用例として、ある企業の営業職のリストラを挙げていた。
営業マン1400人のうち、700人を論文の結果リストラしたらしい。
ふるい落とす基準は、
明らかに見込みのない者、意思や意欲のない者、今後の方針に合致しない者……
これらの基準にあてはまる社員を論文試験でリストラしたらしい。
本書には「リストラした」としか書いていないので、配置転換なのか、解雇なのかは不明だが。
ただ、論文の点数だけでリストラを決める危うさも指摘している。例えば、次のような2人の人材がいた場合どっちがリストラ候補になるだろうか?
①文章力は低いが、現場で愚直・地道に努力する人材
②文章力は高く、企画立案・遂行能力が高い人材
もし論文の点数だけで評価すれば、①がリストラ対象になるのは間違いない。②のような「旗振り役」ばかりが職場に残り、①のような現場で成果を出している人材が一掃されたら組織が回るのか、という問題がある。
論文試験は人材育成のために
本書では、人事担当者が論文試験を活用するポイントとして、次の3点について論文で業務内容を把握して人材をサポートすべきだと述べている。
①何を問題と捉えているか
②現在何をしているのか
③今後何をしていくべきか
サポートと言っても、箸にも棒にもかからない論文を書かれてしまっては、サポートする気力も起こらなくなるかもしれない。
文章力は高く、優秀なのにリストラされた銀行員
論文試験で評価が高いのに「正論」すぎてリストラされた銀行の支店長が紹介されていた。
論文の内容は本質を突き、正義感が強く、優秀な人材なのにリストラされた。
なぜか?
組織の異分子、危険人物
となる可能性があるから。会社から見れば、正論と正義感で組織をかき回されたくないのかもしれない。
「半沢直樹」のような存在は許されないのだろう。
では「異分子を排除して従順で横並び体質社員ばかりの組織が今後生き残れるのか?」という問題は残る。
昇格する論文はさじ加減が必要?
本書を読んで、論文試験を突破するには「文章力」よりも、「何が求められているのかを見抜く能力」の方が重要だと感じた。
日本的組織で生き残るには「出る杭にはならず、かといって引き抜かれる杭にもならず」という微妙なさじ加減が必要なのだ。
論文の内容も、ユニークさをアピールしつつも常識ゾーンから外れすぎないような記述をしないといけない。
「論文試験」といっても入試や資格試験のように「点数の高さ」を競うのではなく、「上層部がわたしに何を求めているのかよく理解していますよ、わたしは会社側の人間ですよ」というメッセージをアウトプットしないといけない。
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