太田啓之著『いま、知らないと絶対損する年金50問50答 (文春新書)』を読んだ。
「年金破綻論」に惑わされずに年金問題の本質を知ることができる本だ。
「年金問題」というのは、簡単にいえば「長時間労働を賛美し続けてきたツケ」だ。
中身のない「長時間労働賛美」をやめれば、年金問題は解消されるのではないか。
年金問題の3要素
本書によれば、年金問題の大きな問題は3つ。
少子化
高齢化
デフレ
この3つ以外の、「年金不払い問題」、「消えた年金問題」、「社保庁職員不祥事」、「官僚の天下り施設(○○ピア)」等は大した問題ではない。
3つの大問題を解決するには、
少子化……出産、子育てしやすい環境を作る
高齢化……高齢者も働く
デフレ……デフレ脱却政策、経済成長
「出産、子育てしやすい環境を作る」ためには出産、子育ての時間を作らねばならない。
長時間労働が当然の職場では、定時退社や育休産休など望めない。
昔のように「10時間以上職場に張り付いていられるおじさん」を前提にした組織設計は通用しない。
また、労力をかけずに成果があげられるように、生産性を向上しないといけない。
「高齢者が働く」ためには、短時間軽作業の仕事を用意しなくてはいけない。
70歳、80歳の老人に「毎日スーツを着て満員電車で2時間かけて通勤しろ」というわけにもいかない。
当然、長時間重労働が当然の職場では無理だ。
「デフレから脱却」するには、収入が上がり、資産価格が上がり、余裕ができた分を消費に回るようにしなければいけない。
デフレ下では長時間労働で残業代を稼ぐのは無理だ。
逆に長時間労働すればするほど単価が下がる。
収入を上げるには長時間労働以外の工夫が必要だ。
年金問題とは働き方の問題
「年金問題」といえば、年金保険料収入減と老齢年金受給額の増加で収支のバランスが崩れる「お金の問題」だと思いがちだ。
が、「年金問題とは日本人の働き方の問題」であると、本書を読んで感じた。
もう、無意味な長時間労働を賛美している余裕などないはずだ。
消費税や年金保険料を上げてでも今の働き方を維持するのか?
働き方を見直さなかったら、年をとったときにツケが回ってくる。
※年金問題は法改正や経済情勢等で刻々と変わる。公開されている最新情報で常に勉強すべきだ。勉強さえしていれば「年金破綻論」でパニックになることはない。