中村仁一著『医者に命をあずけるな (PHP文庫)』の読書記録の続き。
医療費が増え続けるのは「高齢者が増えた」だけが原因ではなく、病院に「不老長寿」を期待しているからだとわかった。
つまり、病院に対する期待が大きすぎて無駄な医療費(健康保険料)が増え続けているのだ。
「人は必ず老いて死ぬ」事実を受け入れられない日本人
どんなに医学が発達しても、年を取ったものを若返らすことはできませんし、死ぬのを止めることもできません。ここのところを考えていない日本人が増えてしまいました。どんな状態の年寄りでも、病院に連れていきさえすれば、なんとかなるはずと思っているのです。
(中略)
年寄りが病院に押しかけるのも根は一つです。年寄りの不具合は、老化を原因としたものです。いまさら、医者にかかって薬を飲んだところで、もとからすっかりよくなるのではありません。しかし、いろいろやった挙句でないと納得しないのです。つまり、諦めるのに時間とお金がかかることになるわけです。
不老長寿なんて不可能、というのは簡単に理解できるはずだ。
が、身体機能の低下の原因が「老化」であることを頑として認めようとはしないのが人情だ。
「年をとってもいつまでも若々しくて元気」という状態は優越感を感じられるからだ。
その心理に乗っかて「アンチエイジング」商法がはびこりすぎている。
あきらめてラクに生きよう
いちばんの老化対策は「あきらめること」だ。
無意味なことに老後の時間とお金は使いたくないものだ。
今、日本人は「年のせい」を認めたがりません。「年のせい」といわれるのを、極端に嫌います。
(中略)
今の日本の年寄りは、医療に対して幻想を抱いていますので、大なり小なりこういう傾向があるような気がします。
「年のせい」を認めてしまうと、自分が”劣った人間”になったような気がするのでしょう。しかし、年をとればこんなものと「年のせい」を認めた方が、生きるのはずっと楽になると思うのですが。
過去6年間の医療費を見ると、毎年右肩上がりで増え続けている。
2007年度 33.4兆円
2008年度 34.1兆円
2009年度 35.3兆円
2010年度 36.6兆円
2011年度 37.8兆円
2012年度 38.4兆円
出典:「平成24年度 医療費の動向」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/topics/medias/year/12/dl/iryouhi_data.pdf
医療に対して過度な期待をやめて年齢相応に生きれば、無駄な医療費が削減できる。
そうなれば老後資金が有効活用できるだけではなく、現役世代の負担も軽くなる。
「医療費が増えるのはやむなし、だから消費税増税、健康保険料値上げ」
これでは経済が持たない。
“老いらくの来むと知りせば門さしてなしとこたへてあはざらましを” (新古今和歌集 895)
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