わたしが早期リタイア生活の理論書と勝手に位置づけている中国の古典『老子』。
退職前に何度も読んだ一節は、
企(つまだ)つ者は立たず、跨(また)ぐ者は行かず、自ら見(あらわ)す者は明らかならず、自ら是(よし)とする者は彰(あら)われず。自ら伐(ほこ)る者は功なく、自ら矜(ほこ)る者は長(ひさ)しからず。
つまさきで背のびをして立つものは、長くは立てない、大股で足を広げて歩くものは、遠くまでは行けない。自分で自分の才能を見せびらかそうとするものは、かえってその才能が認められず、自分で自分の行動を正しいとするものは、かえってその正しさがあらわれない。自分のしたことを鼻にかけて自慢するものは、何ごとも成功せず、自分の才能を誇って尊大にかまえるもの、長つづきはしない。
金谷治『老子』(講談社学術文庫) p.81-82
一言で言えば「無理はするな」ということだと解釈している。
仕事で無理をしても長続きはしない。
会社の欲望は無限
会社では目標をクリアしても翌年度はさらに高い目標(というよりノルマ)を課せられた。
まるで「ゆすり・たかり」の被害にあっているような状態になってしまった。
正社員でいることの「期待値」が下がり、リスクに見合ったリターンが期待できなくなった。
マイナスのリスクばかりが目立つようになった。
「無理はしない」ということを実践しようとすると「退職する」という結論になった。
正社員でいつづける苦しさ
世間では「正社員になればバラ色」といった風潮があるが、そんな甘いものではない。
正社員というのは既得権益ではない。
無限に膨張する会社からの要求に応えていくだけの卑屈な精神と、過労死しないだけの体力が求められる。
わたしより前に退職して独立していった先輩が「ここで生き残りたければスーパーマンにならないといけない」と言ったが、そんなのにはなれないし、なりたくなかった。
年収数百万円のスーパーマンなんて割に合わない。