池谷裕二『脳には妙なクセがある (扶桑社新書)』を読んだ。
本書によると、「年を取ればとるほど、幸福を感じる度合いが増える」という。
人生に幸せを感じる度合いはU字曲線を描くことがわかりました。つまり、20歳以前まで高かった幸福感は、20代で一気に落ち込み、40代から50代前半頃までが最低迷期となります。そして、これを過ぎると回復を始め、調査された範囲である85歳に向けて徐々に上昇します。
p.190-191
この傾向は子供や配偶者などの有無には左右されないため、独身でも既婚子持ちでも「年をとると幸福感が増える」らしい。
40代~50代前半は仕事を辞めたい時期
本書を読んで加齢と幸福度の推移を分析してみると、こうなる。
- 20代になると就職する人が多いため、幸福度は一気に下落する(笑)
- 40代から50代前半にどん底状態となる(仕事と家庭の両立で忙しく、お金もたくさん必要な時期だから)
- 50代後半になる出世競争の結果が見え、育児も終わって幸福度の下落が止まる
- 退職して以降は死ぬまで幸福感は右肩上がりとなる
40代~50代前半が人生で幸福感が一番低い時期なので、「一番仕事を辞めたい時期」だ。
中高年が「会社を辞めて解放されたい!」と思うのは脳科学的に実証されている自然な感情なのだ。
だから、罪悪感や劣等感を感じる必要はまったくない。
50代前半で出世競争がある程度終わり、サラリーマンとしての「先」が見えて子育てからも解放されると幸福度の下落は止まる。
その後、退職してリタイア生活に入ると幸福度は右肩上がりとなる。
脳科学から導かれる結論は「みんな宮仕え(会社・出世競争)が大嫌い」ということだ。
年をとったら幸福になるが詐欺に遭いやすくなる?
年をとって幸福感が増すことはいいことばかりではないようだ。
幸福感の増加で「損に対する危機感」が減るようだ。
マネーゲームをしている時の脳の反応を調べたところ、「損をしそうだ」と予感させる状況では、若者のほうが脳が強く反応したというのです。とくに金額が多くなるほど反応が強かったのです。
逆に、儲かりそうなときの反応は、若者と年輩者で差がありませんでした。つまり、年輩者は損に対してあまり固執しないということになります。ただし、実際に損をしてしまったときの反応は、若者でも年輩者でもほとんど同じだったといいますから、損失そのものへの嫌悪感は年を重ねても減ってはいません。ただ、損を必要以上に回避しようとしなくなるわけです。
本書p.194-195
年をとると、若いころに比べて損を回避しなくなる。しかし、損をした時の精神的ダメージは若い頃と変わらない。
これは「年をとると詐欺に引っかかりやすくなるが、引っかかったことに気づいたあとのダメージは大きい」といえる。
若い頃はお金の管理に厳しく「自分は詐欺なんかにひっかからない!」と思っていても、年をとるとガードが甘くなるようだ。
まとめ
- 40代~50代前半は人生で一番「仕事を辞めたい」と思う時期
- 年をとるほど幸福感は増すが、詐欺(投機・ギャンブルも?!)に注意