佐藤雅彦・竹中平蔵『経済ってそういうことだったのか会議』(日経ビジネス人文庫 2002)を読んだ。
この本も「もっと早く読んでおけばよかった」と思った本だ。
出版年は2002年、今から13年前だが、内容は現在でも十分通用する。
- お金とは何か?
- お金儲けとは悪いことなのか?
- どんな競争が健全といえるのか?
- 日本のサラリーマンはなぜ「やる気」がないのか?
- 日本のサラリーマンはなぜ所有していない自分の勤務先を「わが社」というのか?
- 日本人はなぜ株式投資を「怪しい」と思うのか?
- アメリカ人はなぜ「構造改革」が好きなのか?なぜ日本人は「構造改革」に違和感を覚えるのか?
- アメリカに「IT産業」はない
- 早く、確実にビジネスで成功するにはどうすればいいのか?
といったことについて、文庫本サイズの本に詰まってある。非常に中身が濃い本だ。
わたしが買った本は「35刷」だった。経済本で35刷りって、結構ロングセラーじゃないだろうか。
目からうろこだったのは「業界」という言葉の意味の起源だ。
現在でも「電力業界」「IT業界」「セミリタイア業界」のように気軽に使っている。
鉄鋼業界とか電力業界。この業界というのはいつできたかというのを調べてみますと、かなりの部分が国家総動員法によって作られているんです。第二次世界大戦のころですから、1930年代ですかね。何のために作られたかというと統制するためなんです。
だからその成り立ちから言っても、業界というのはもともと非常に特別な概念だったということですよね。統制と結びついて、通産省が一括りにして、自由な競争とは相容れない概念なんです。
p.154
※引用文中の「1930」は本書では漢数字だったが、読みやすくするためにアラビア数字に変更した。
国家総動員法というのは昭和13(1938)年に第1次近衛内閣時代にできた法律で、国家のリソースをすべて戦争に投入するため、つまり軍国主義を実施するために政府が国民、物資を統制できるようになった。
当然、民間企業も「統制」の対象となり、同業の会社をまとめて「業界」として分類して統制した。
具体的にどんなふうに統制したか知りたければ、百田尚樹『海賊とよばれた男』(講談社文庫 2012) を参照するのがもっともわかりやすい。創意工夫して伸びようとしている、とある石油会社を、役所と同業他社がよってたかって引きずり下ろそうとする姿が描かれている。
戦争が終わって70年もたっているのに、まだ「業界」という考え方は生き残っていて「ムラ社会」「横並び」「相互監視」「突出した成功者や異なった考えを許さない」の温床となっている。