正社員の実態は「成功した不動産投資家」だった

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東京の夜景

決算書はここだけ読め! キャッシュ・フロー計算書編』(前川修満(著), 講談社現代新書, 2010) を読んだ。

会計知識ゼロでも「キャッシュ・フロー計算書」の面白さを堪能しならがら読み方を身につけられるお得な本だった。

本書を読むことで、「正社員神話」の実態も理解することができた。

「正社員神話」というのは今わたしが思いついた言葉だが「正社員になれば経済的に豊かな一生を送れる」という「神話」だ。

現在「同一労働同一賃金」が議論されているが、これも「非正規社員が正社員と同等の収入になればみんなハッピー」という考えから来ていると思う。

本当に正社員になるだけで「お金の問題」が魔法のように消えてしまうのか?

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都心の一等地が1500円

なぜ、昔は「平凡な会社員」でも豊かそうに見えたのか。

本書の「高級住宅街に住む元サラリーマンの述懐」に出てくる元サラリーマンの小山さんのエピソードを読んでわかった。

20年前(たぶん1990年頃)に著者が経験した話だ。

小山さんは70歳過ぎくらいの年頃の人だった。

彼は大手電機メーカーのサラリーマンとして定年まで勤務して、退職後は子会社の役員をしていたそうだ。

かれは、サラリーマンとしては優遇されたていた部類に入りますが、大出世とはいえず、どちらかというと平凡で大過ない人生を送ってこられました。

p.22

わたしの想像だが、小山さんは大手電機メーカーで部長クラスの中間管理職で定年を迎え、子会社の役員に就任したと思われる。

小山さんの自宅は世田谷区内の高級住宅街にあって、近所には有名人の邸宅も並んでいる。

著者が小山さんの家を訪れたとき「平凡なサラリーマンがなぜこんな高級住宅街に家を持てるのか?」と疑問に思ったそうだ。

土地だけでも1億円以上はする。

答えは、「1億円以上の土地を1,500円で買ったから」だ。

都心の一等地が1,500円で買えた時代に買ったのだ。

これが、平凡な正社員が豊かになるカラクリだった。

「正社員神話」には「不動産神話」が必要

現代は正社員になる(唯一の)メリットとして「収入が長期間安定している(かも)」というのがある。

でも、これだけでは正社員は豊かになれない。

経済がインフレで、不動産価格が右肩上がり

という「不動産神話」が必要だった。

つまり「正社員」の実態は「不動産投資家として成功して財を成した資産家」のことだったのだ。

このような例は、なにも小山さんだけではありません。昭和時代を生きた多くの人たち(そして、筆者の世代の多くも)の資産形成はこれと似たようなものでした。要するに、借金をして不動産を買ったのです。時の経過とともに、不動産の価値は上がり、借金の負担は軽くなるのです。

p.26

夢は正社員」の「」とは「不動産投資で一発当てて金持ちになる」という意味だったのだ。

結局、「正社員神話」はバブルの崩壊による「不動産神話の崩壊」と終身雇用の崩壊で消えてしまった。

正社員から「将来絶対に値上がりする不動産」と「安定雇用」がなくなってしまえばどうなるか。

「社畜」になる。

神話が崩壊して正社員でも安泰とはいえない時代、これからどうやって資産形成をしていけばいいのか、キャッシュをまわしていけばいいのか、本書を読んでヒントがつかめた。

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