地獄と老後貧乏

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embers

地獄と老後貧乏の共通点は「儲かる」という点だ。

ということを、『浄土真宗はなぜ日本でいちばん多いのか』 (島田裕巳(著), 幻冬舎新書, 2012)で知った。

本書は日本仏教のほぼすべての「宗派」について、それぞれの特徴や歴史を学べる「日本仏教入門書」だ。

今は紅葉の季節。

紅葉と言えば京都の永観堂(禅林寺)が有名だが、本書を読んで永観堂が浄土宗の西山禅林寺派の総本山であることを初めて知った。

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「地獄」は信者集めの道具

わたしが興味を惹かれたのは、日本仏教では信者を集めるために「地獄」が道具として使われていたことだ。

民衆の不安を煽り、宗教に依存させ、信者にする。

1000年近く前から、「不安」というのは集客(つまり金儲け)の鉄板ツールなのだ。

天台宗の僧、源信が描いた『往生要集』の地獄絵図の凄惨なありさまが、浄土教信仰を広める決定的なツールとなった。

源信は、そのなかで地獄のありさまを凄惨なものとして描き出した。それは、地獄の恐ろしさを強く印象づけることで、極楽往生への信仰を喚起するためだった。この『往生要集』に刺激を受けて、やがて各種の地獄絵が描かれるようになり、それは民衆を教化するための「絵解き」に用いられた。

p.104

参照往生要集絵1 地獄図(姫路市・大覚寺(浄土宗西山禅林寺派))

地獄をビジュアル化して見せることで、「地獄とは恐ろしい悲惨な場所だ」ということを民衆の目に焼き付けさせる。

地獄って怖いですよね、行きたくないですよね。

でも大丈夫。

地獄に落ちない簡単で確実な方法をあなただけに教えます。

「念仏」さえ唱えれば地獄に落ちずに、確実に極楽に行けます。

『往生要集』の「地獄絵」のヒットで類似の地獄絵が乱立し、不安に駆られた民衆は信者として「教化」されていく。

地獄の次は老後貧乏

現代は地獄で不安を煽ってもついてくる人は少ないだろう。

地獄に変わる不安煽りツールは「老後貧乏」つまり「漠然とした根拠のない将来不安」だ。

「60歳まで3,000万円貯金しないと老後は悲惨だぞ」

「老後貧乏になりたくなければ、正社員になって定年まで馬車馬のように働け」

「定年後も働かないと年金だけでは食えないぞ」

「働くだけでは大金は貯まらない、投資をしろ、副業をしろ」

などなど。

将来のことは誰にもわからない。

不安を感じるのは当然だ。

そこに、「これさえやっておけば(持っておけば)一生安泰」と何かをすすめられたら、不安を解消したい人は飛びつく。

歴史を学べば煽られなくなる

不安を煽られて無駄に不安を感じたり、無駄遣いしないためには「歴史を学ぶ」ことだ。

例えば、本書で日本仏教の歴史を学べば、「不安を効果的に与えれば、民衆の心をコントロールできて儲かる」ことがわかる。

不安を煽る商法はこれからも手を変え品を変え発生するだろう。

お金と時間を無駄にしないために、歴史を学ぶべきだ。

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