『数学的思考法―説明力を鍛えるヒント』(芳沢光雄著 講談社現代新書 2005)を読んだ。
この本のおかげで2日間ほど悩んだ。
本書では数学の教科書で「確率」と「無限等比級数」を別々に記述していることを批判している。
悩みの種は次の箇所だった。
教科書で「確率」と「無限等比級数」をまったく別個に記述しているが、ここで相撲の巴戦を考えてみよう。実力の同じ3人が巴戦を行うとき、最初に戦う2人が有利になるのだが、これは確率と無限等比級数を融合させると、「3人の実力が等しいとき、最初の2人の勝利確率は5/14であり、もう1人の勝利確率は4/14である」ことが導かれるのである。
※強調は引用者による。
え?そうなの?
最初に対戦した2人の方が2戦目に初戦を迎える者より優勝する確率が高い……なぜ?
3人の実力が同じなら、3人とも優勝する確率は同じじゃないの?
と思ったが、違うようだ。
なぜ「実力の同じ3人が巴戦を行うとき、最初に戦う2人が有利になる」のか、悩んだ。
巴戦の不公平な勝利確率
ここで巴戦の定義をする。
巴戦とは3人のうち最初に2連勝した者が優勝するというシステムだ。
A、B、Cの3名が巴戦を行うとする。
1回戦はA、Bが対戦する。
2回戦は1回戦の勝者とCが対戦する。
ここでもしCが負ければ、1回戦の勝者(AまたはB)が2連勝するので終了。
Cが勝てば3回戦を行う。
3回戦はCと1回戦の敗者が対戦する。
以下、誰かが2連勝するまで行う。
ここで、Cが優勝する確率PCを考える。
巴戦で対戦条件が異なるのはA、B、Cの3人のうちCだから、Cの優勝確率がA、Bと異なるという仮定をする。
A、Bが優勝する確率は、AとBの対戦条件が同じだから、Aの勝利確率をPA、Bの勝利確率をPBとすると、
PA=PB
Cの勝利確率PCがわかれば、AまたはBが優勝する確率は
1-PC
だから、これを2で割ればPAとPBがわかる。
PC < PA = PB
であれば「巴戦は不公平なシステム」となる。
さあ、これから巴戦の不公平さを見ていくことにする。
数学は苦手なので、小難しい数式を使わずにCが優勝する場合を愚直に数えていきたい。
Cの勝利確率を直感で求める
Cが優勝するケースを次の2種類にわける。
①Cが1敗もせずに2連勝する
②Cが何回か勝ったり負けたりした後に2連勝する
①は、「1回戦でAが勝った後にCが2連勝する」場合と、「1回戦でBが勝った後にCが2連勝する」場合の2通りだ。
「1回戦でAが勝った後にCが2連勝する確率」はAとCの勝利確率はそれぞれ1/2で3回戦うから、
(1/2)×(1/2)×(1/2)=1/8
「1回戦でBが勝った後にCが2連勝する確率」も同様に、1/8となる。
よって、「Cが1敗もせずに2連勝する確率」は、
1/8+1/8=1/4
となる。
(次ページに続く)