2017年最初に紹介する本は、ドラッカーの『プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))』( 上田 惇生(編訳), ダイヤモンド社, 2000)だ。
わたしがサラリーマン時代に読んで、「早期退職とセミリタイア生活の成功」をイメージするのに非常に役に立った本だ。
わたしの場合は40代で会社を辞めたが、定年まで働けたとしても65歳で退職することになる。
現在の平均寿命は80代だから、もし再就職しなければ定年退職しても20年程度の「無職期間」が発生する可能性がある。
定年まで勤めるかどうかにかかわらず、誰もが「セミリタイア」(本書では「第二の人生」と呼ぶ)について考える時代になっている。
40年後も会社があるか
人間がふつうに80~90年も生きるとなると、「新卒で就職した職場で定年まで勤めあげれば老後は安泰」とはいえなくなってくる。
歴史上初めて、人の寿命のほうが、組織の寿命よりも長くなった。そのため、まったく新しい問題が生まれた。第二の人生をどうするかである。
もはや、三〇歳で就職した組織が、六〇歳になっても存続しているとは言い切れない。そのうえ、ほとんどの者にとって、同じ種類の仕事を四、五〇年も続けるのは長すぎる。飽きる。惰性になる。耐えられなくなる。まわりの者も迷惑する。
p.209
40~50年も同じ会社・同じ職場にいるのは「長すぎる。飽きる。惰性になる。耐えられなくなる。まわりの者も迷惑する」というドラッカーの言葉は、日本企業に勤める多くの人が共感できると思う。
仮に、20代前半で新卒で就職しても、その人が定年退職するまでの40数年間、会社が存在しているのか、まったくわからない。
わたし自身、サラリーマン時代に経営不振の会社を「消す」プロジェクトに関わったことがある(わたしの勤務していた会社が倒産したわけではない)。
「大手企業の系列でも経営に失敗した会社は消える」ことを実体験した(幸い、消滅した会社の従業員は受け入れ先の会社で全員再雇用となった)。
40年も働くなんて、長すぎる
仮に、安定した職場であっても、40年以上も働くのは長すぎる、とドラッカーは言う。
三〇のときには心躍った仕事も、五〇となれば退屈する。したがって、第二の人生を設計することが必要になる。
p.210
本書では「第二の人生」について、3つの方法を提示している。
- 転職(別の職場で新しいことに挑戦)
- 本業は辞めずに、副業を持つ
- ソーシャル・アントレプレナー(篤志家)
3つの道のそれぞれの具体例は、本書を参照してほしい。
「早期退職してセミリタイア」は3番目の「ソーシャル・アントレプレナー(篤志家)」に近い。
現役時代に貯蓄を作ってさっさと会社を辞め、退職後はマイペースで少し働いたり、自分が心からやりたいことを最優先にするライフスタイルを選ぶ。
セミリタイア資金は時間をかけて作る
わたしが、本書で一番共感した「セミリタイア成功法」は次の文にある。
第二の人生をもつには一つだけ条件がある。本格的に踏み切るかなり前から助走しなければならない。
p.212
会社を辞めてセミリタイア生活に入るには、まず必要なのは「お金」だ。
貯金があまりないのに「会社を辞めてセミリタイアしたい!」と思っても、実行するのは無謀だ。
精神的に持たない。
見切り発車しすぎると、退職後に「資金不足」に悩まされるだろう。
サラリーマンの限られた収入からセミリタイア資金を作るには、ある程度の期間が必要だ。
宝くじやハイリスクな投資で一か八かで「エイヤっ」とセミリタイア資金を作ろうとするのは、おすすめできない。
ある程度の時間をかけて「お金を貯めて運用する経験」を積んでおかないと、退職後にセミリタイア資金を「パッと」失ってしまう可能性がある。
資産運用スキルがゼロの人が「一攫千金」であっという間に稼いだお金は、あっという間に使い切ってなくなる可能性が高い。
長期間かけて築いた資産ほど、長持ちする。
まとめ
本書はビジネスパーソンとして生産性を上げるための考え方も満載だから、「セミリタイアはまだ先の話」という人にもおすすめの一冊だ。
本書の使い方は、
本書の内容を実践して生産性を上げる
→生産性が上がるから、お金が入ってくる
→蓄財のスピードが上がる
→早期リタイア、セミリタイアへ
となると思う。