ブルーバックスの『時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体』(松浦 壮(著), 2017)を読んだ。
会社を早期退職してセミリタイア生活に入った理由のひとつが「自分の時間を大事にしたい」だった。
「自分の時間」と言った場合の「時間」とは何か。
そもそも「時間とは何か」という疑問が本書を読んだきっかけだった。
「時間は誰にでも同じように流れているわけではない」ということが本書を読んでわかった。
例えば、超高速(光の速さに近い速度)で進むと、時間が遅れる。
超高速で進むと時間が遅くなる
光の速さの半分(時速15万km)で進む宇宙船があったとする。
宇宙船には「光時計」という時計が搭載されている。
構造は簡単で、鏡を2枚、15cmの間隔で置いて、鏡から鏡へ光を発射する。
光は鏡で反射して往復する。
往復する回数を数えて時間を測る。
光が15cmの鏡の間をを1往復すると光速(時速30万km)で30cm進んだことになるので1ナノ秒(10億分の1秒)と計測できる。
この宇宙船を地球から見ると怪現象が
地球から、光速の半分の早さ(時速15万km)で進む宇宙船内の「光時計」を観測したとする。
地球から光時計の光を見ると、斜めに進んでいるように見える。
止まっている光時計よりも、光速の半分の早さで動いている光時計の光は長距離を進んでいるように見える。
仮に2倍の距離を進んだとすると、宇宙船内の時間の流れは地球の半分ということになる。
どれだけ遅れているのか、実際に計算してみた。
三平方の定理で時間の遅れを計算
本書では「三平方の定理で時間の遅れを計算できるから余裕があればやってみれば?」といったことが書いてあった。
ヒマなので計算してみた(笑)。
地球から見た光時計の片道の行程を抜き出してみた。
赤線で補助線を引いて直角三角形ABCを書いてみる(三平方の定理を適用するため)。
それぞれの辺の長さは次のとおりだ。
BCは宇宙船内の光時計の光が0.5ナノ秒で進んだ行程なので、光速をcとすると、
BC = c×0.5(ナノ秒) = 0.5c
とする。
ACは光の速さの半分(0.5c)で動く宇宙船がt(ナノ秒)で進んだ距離だから、
AC = 0.5c × t = 0.5ct
とする。
時間tは、地球から見た宇宙船内の時間だ。
ABは地球から見た宇宙船内の光時計の光の行程だ。
光速(c)でt(ナノ秒)かけて進むから、
AB = ct
となる。
計算結果
上記の値を三平方の定理で計算すると、
$$\left( ct\right) ^{2}=\left( 0.5ct\right) ^{2}+\left( 0.5c\right) ^{2}$$
$$c^{2}t^{2}=0.5^{2}c^{2}t^{2}+0.5^{2}c^{2}$$
$$両辺をc^{2}で割る。$$
$$t^{2}=0.5^{2}t^{2}+0.5^{2}$$
$$t^{2}\left( 1-0.5^{2}\right) =0.5^{2}$$
$$t^{2}=\frac {0.5^{2}}{1-0.5^{2}}$$
$$t=\sqrt {\frac {0.5^{2}}{1-0.5^{2}}} ≒ 0.5773\ldots$$
▼Google先生の計算結果
よって、宇宙船内の0.5ナノ秒は地球の約0.58ナノ秒となる。
つまり、地球上で1ナノ秒経過したとき、宇宙船では約0.87ナノ秒(≒0.5/0.5773…)しか経過していない。
「ナノ秒」は小さすぎるので「分」で例えると、地球では100分経過しているのに、宇宙船内では約87分しか経過していない。
つまり、地球上に比べて宇宙船内の時間が遅れている。
※この記事を書くのに図を描いたり計算したりして、普通の記事の10倍くらい労力がかかった(笑)。
▼紙書籍版の帯
▼参考サイト
特殊相対性理論における時間の遅れのピタゴラスの定理を用いた計算方法 | TANTANの雑学と哲学の小部屋
中学校で習う数学の範囲でアインシュタインの相対性理論を分かりやすく解説する – Yukihy Life