早期リタイアする場合(定年後のリタイアにもいえるが)、「莫大な貯金」があれば「老後破産」のような「失敗」は起こりにくいと考えがちだ。
だから、早期リタイアを目指す場合なるべくたくさんの貯金をためこんでから退職しようとする。
しかし、『事故がなくならない理由(わけ): 安全対策の落とし穴』(芳賀 繁(著), PHP新書, 2012)を読んで、「貯金がたくさんあればあるほど失敗のリスクが増加」すると感じた。
貯金は「ギリギリセーフ」くらいの金額の方がいいのかもしれない。
なぜ貯金がたくさんあると早期リタイアは失敗しやすくなるのか?
人間はリスクを取るのが好き
仮に、一生遊んで暮らせる貯金ができたとする。
100歳まで浪費しまくっても貯金が余りまくるような金額だとする。
「一生安泰」という四字熟語が頭の中に浮かぶ。
今すぐ会社を辞めて死ぬまで遊んで暮らしても「大丈夫」と確信して退職する。
本当に大丈夫なのか?
本書によると、「人は安心すればするほど、リスクを増やす行動を取る」という。
安心しきってしまうと、「ちょっとくらい危険なことをやっても大丈夫だろう」と気の緩みが出る。
この現象を「リスク補償」という。
リスク補償行動とは、低下したリスクを埋め合わせるように行動が変化し、元のリスク水準に戻してしまうことをいう。
本書では「クルマの安全装置が運転を乱暴にする」「低タールたばこが発癌リスクを低下させなくする」「治水工事をバッチリやった町の人口が増えてかえって洪水被害が増える」といった「安心がリスクを増やす例」を紹介している。
「貧乏リタイア」の方が低リスク?
早期リタイアに話を戻すと、莫大な貯金があって「安心しかない」状態よりも、「節約や節制をしないと老後破産の可能性がある」ほうが人は慎重になる。
貯金がたくさんあると「ちょっとくらい無駄遣いしても大丈夫」という「慢心」が生まる。
「ちょっとの無駄遣い」が積もり積もって「大きな浪費」になる可能性がある。
早期リタイア成功のカギは「貯金の額」よりも「行動の慎重さ」だと、本書を読んで思った。
まとめ
「安心・安全」を追求すればするほど「危険」が増す。
※「リスク補償」については日本人は子供の頃から歌で学んでいる(笑)。