少子高齢化で将来受け取る年金の額は減る。
という想定で老後資金のシミュレーションをしているセミリタイア希望者・実践者は多いと思う。
では、具体的にいくら減るのか。
「年金の額を決める計算式」を知っている人は少ないのでは。
わたしもよく知らなかった。
なので、本記事で年金の決まりかた方を紹介する。
年金の額を決める2つの数字
国が高齢者に配る年金給付額の算定は「名目手取り賃金変動率」と「スライド調整率」の2つの数字で決まる。
「マクロ経済スライド」という方式だ。
「名目手取り賃金変動率」とは、2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率に前年の物価変動率と可処分所得割合変化率を乗じたものだ。
例えば直近(令和3(2021)年度)の「名目手取り賃金変動率」は、
令和3年度の名目手取り賃金変動率 = 実質賃金変動率(平成29(2017)~令和元(2019)年度の平均) × 物価変動率(令和2(2020)年度の値) × 可処分所得割合変化率(平成30(2018)年度の値)
となる。
「スライド調整率」とは現役世代の減少(少子化)や平均寿命の伸び(高齢化)から決まる数字だ。
少子高齢化度が高いとスライド調整率が高くなり、年金の減額要因となる。
年金改定率の計算
年金給付額の増減は次の①~③の3パターンある。
①「名目手取り賃金変動率」≧「スライド調整率」
②「名目手取り賃金変動率」<「スライド調整率」
③「名目手取り賃金変動率」が下落
①の「名目手取り賃金変動率」≧「スライド調整率」の場合、
年金改定率 = 名目手取り賃金変動率 – スライド調整率
となる。
名目手取り賃金変動率が上昇してもスライド調整率の分マイナスされるので、年金改定率が減る。
つまり、インフレでも少子高齢化がすすんでいると、年金の増えかたは小さくなる。
「名目手取り賃金変動率」=「スライド調整率」となった場合は「年金改定率 = 0」で「現状維持」となる。
つまり、年金は増えない。
②の「名目手取り賃金変動率」<「スライド調整率」の場合、
年金改定率 = 0
となる。
「名目手取り賃金変動率」より「スライド調整率」が大きい、つまり小さいインフレと少子高齢化の場合、年金改定率はゼロとなり「前年度と同額」となる。
③の「名目手取り賃金変動率が下落したとき」は、
年金改定率 = 名目手取り賃金変動率(下落率)
となる。
デフレの場合、名目手取り賃金変動率の下落に比例して年金も減額される。
「マクロ経済スライド」をまとめると
つまり、「マクロ経済スライド」とは少子高齢化社会だと「年金はインフレでも増額が小さいか増えないが、デフレ時はしっかり減る」というシステムだ。
だからといって「少子高齢化だけ」を理由に減額されることはない。
年金が減らされるのは名目手取り賃金変動率が下落したときだ。
直近の年金給付額
直近(令和3(2021)年度)の年金給付額は、名目手取り賃金変動率が▲0.1%とマイナスだったので、上記の③に該当する。
年金改定率は、名目手取り賃金変動率に連動して前年度比▲0.1%となった。
参考サイト
年金給付額の調整(総務省統計局「なるほど統計学園高等部」)
令和3年度の年金額改定についてお知らせします ~年金額は昨年度から 0.1%の引き下げです~(厚生労働省)
年金給付額が抑えられる ? 2019年実施の「マクロ経済スライド」の中身(大和ネクスト銀行)
※上記は2021年3月7日現在の情報です。