川端康成『雪国』(新潮文庫, 1947)を遅ればせながら読んだ。
主人公の島村が、親の財産があるから働かなくていい男、つまり「完全リタイア者」、要するに「ニート」というのが興味を引いた。
冒頭は有名だ。
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。
p.5
ちなみに、「国境」は「こっきょう」と読むのか「くにざかい」と読むのかは諸説あるらしい(Wikipedia「雪国(小説)」)。
この冒頭だけ読むとかっこいいんだけど……。
長いトンネルを越えるニート
冒頭だけ読むとかっこいいけど、内容は「お金も時間もありあまっている島村というニート(男)が、雪国(越後湯沢)の温泉旅館に向かっていた」ときの描写なのだ。
彼は妻子ありのニートながらもお金と時間がたっぷりあるから、温泉旅館に長期滞在して現地の恋人(?)の芸者の「駒子」と過ごす。
駒子は島村にぞっこんのようなのだけど、島村はどこか冷めている。
ニートでも仕事があれば安心
「島村はニート」と言ってしまったが、完全に無職というわけではなく、一応「文筆業」っぽいことをやっている。趣味の西洋舞踊に関する文章を書き、一定の評価を得ている。
彼本人は文章を書く仕事を「定職」とは思えないながらも、仕事があることが「気休め」となっている。
時々西洋舞踊の紹介など書くので文筆家の端くれに数えられ、それを自ら冷笑しながら職業のない彼の心休めとなることもあるのだった。
p.24
現代風に言えば、ブログを不定期更新して小遣い稼ぎをしているようなものか(笑)。
描写がすばらしい
本書は、風景の描写がすばらしい。
登場人物の心情とからめて描く雪国の描写は旅情をかきたてる。
読んでおいて絶対に損はない一冊だ、と感じた。