橘玲『バカが多いのには理由がある』

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近所の書店で見つけたので買った本。ファンとしては書店で見つけたら(+面白そうならば)原則として買う。タイトルもいい。

帯には、

「政治、経済からワイドショーまでカバーする異色の社会評論」

と書いてあるので、ワイドショーをぼ~っと見るように気軽に読めると思っていたが、最初の章「PROLOGUE」にあるテーマが結構重い。しかしここで挫折するのはもったいない。気軽に読みたければ「Part1 POLITICS 政治」以降から読み進めたほうがいいと思う。

中身は『週刊プレイボーイ』に連載されたコラムを集めたものなので、文章の一部は橘玲公式サイトでも読めるが、最後まで読み進めるとすべてのコラムが一本の線でバシッと繋がるのはさすがプロやな~と思う。

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バカとは何か


本書で定義する「バカ」とは何か?著者がやりてのテレビマンから聞いた話によると、

昼間っからテレビを見ている視聴者って、どういうひとかわかりますか? まともな人間は仕事をしているからテレビの前になんかいません。暇な主婦とか、やることのない老人とか、失業者とか、要するに真っ当じゃないひとたちが僕らのお客さんなんです。彼らをひとことでいうと、バカです。僕らはバカを喜ばせるためにくだらない番組を毎日つくっているんですよ。

本書p.4


テレビが面白くないとか偏向番組ばかりだという意見があるが、視聴者に合わせているからこうなっちゃうのか?

いまではこうしたニヒリズムがメディア全体を覆ってしまったようです。嫌韓・反中の記事ばかりが溢れるのは、それが正しいと思っているのではなく、売れるからです。ライバルが過激な見出しをつければ、それに対抗してより過激な記事をつくらなければなりません。

本書p.5


テレビ番組だけではなく、大手書店の新書コーナー、政治コーナーは「嫌韓本」に覆い尽くされている。嫌韓ハイパーインフレのような状態。やっぱり、売れるからなんでしょうね。

会社から見た正社員のメリット


いちばん大きく同意したのは「なぜ日本企業は正社員を終身雇用で抱え続けるのか?」。いったん採用すると定年まで解雇できない正社員は、労働者に一方的に有利な制度に思える。しかし、会社から見ても大きなメリットがあるという。

正社員が労働者にとって一方的に有利な契約なら、企業はなぜそんな不利な雇用形態をいまだに続けているのでしょうか? 正社員として採用するかどうかは企業の自由なのですから、全員を「非正規」にすることもできるはずです。

もちろん正社員で募集しないと優秀な人材が採れないからでしょうが、日本的雇用が生き残る理由はそれだけではありません。日本の会社は、終身雇用と引き換えに、正社員に対して絶対的な権力を持つことができるのです。

日本の裁判所は、解雇については労働者の味方ですが、転勤や配置転換などを不服とした訴えにはきわめて厳しい態度で臨みます。「生活の面倒を見てもらっているのだから、多少理不尽なことをされてもガマンしなさい」というわけです。最低賃金や有給など、法に定められた最低限の労働条件を満たしていれば、会社は正社員に対してどんな無理な要求をしても許されるのです。

本書p.113


転勤、部署の変更、昇進、降格などの人事発令は「業務命令」なので、拒否するのは不可能に近い。なぜなら、「業務命令」に反したら「懲戒処分」にすると就業規則に書いてあるからだ。

わたしも転勤命令を受けた時は引っ越しが面倒で断りたかったが、仕方なく引き受けた。「業務命令は絶対」と思っていたからだ。転勤だけですむならまだマシなほうで、わたしが辞める頃は片道出向・転籍が大流行だった。会社の先輩が「関連会社でもない縁もゆかりもない会社に籍を移されるなんてあるわけない」と言っていたが、その「あるわけない」ことが現実に起こっている。

正社員は終身雇用と引き換えに大きな犠牲を払っている……正社員志望の人はこれをよく知っておくべきだ。最近は終身雇用というのはすっかり形骸化してしまったので、ますます正社員の存在理由がわからなくなっているけど。

ジュースで例えれば、高度経済成長時代は濃度100%のジュースだったのに、今はどんどん薄められて果汁は10%で残り90%は水になっている。なのにまだ100%ジュースだと思い込んでありがたがっている。

バカの多い世の中を生きるには


本書の最後(あとがき)に、バカの多い世の中を生きるための指針が示されている。ここを読むだけでも価値がある。

憲法改正、集団的自衛権、靖国問題、STAP細胞報道、ブラック企業、原発事故などなど、いまが旬のトピックスを斬りまくっているので、梅雨だけど読んでいてスカッとする。

ただし最後の「人道支援ビジネス」の実態は背筋が凍って笑えない。

<今回読んだ本>
橘玲『バカが多いのには理由がある』(集英社 2014)

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