『会社が嫌いになったら読む本』(楠木 新(著), 日経プレミアシリーズ, 2009)を読んだ。
30代~50代に早期退職して別の人生に転身した元サラリーマンたちのその後を追った本だ。
どんなきっかけで「早期退職」を選んだのか、早期退職後は何をやって生きているのか、という実例がたくさん紹介されている。
サラリーマンは40歳で迷う
どうして40歳を過ぎるとサラリーマン人生に疑問を持つのか?
何をきっかけにサラリーマンを辞めようと思ったのか?
具体的にどのような道に転身しているのか?
早期退職して、サラリーマン時代よりも幸福になれたのか?
サラリーマンを早期退職して別の道に進もうと考えている人、実際に退職して次の道を模索している人は読む価値のある1冊だ。
会社にいるのが辛くなる理由
早期退職したくなる大きな理由の一つが「会社にいるのが辛い」だと思う。
本書によると、「会社員生活を辛く、複雑にしている」理由は、
自律的に仕事に取り組んでいる人がいないから
だという。
つまり「会社では”主体的”に仕事をしている人が非常に少ない」ということだとわたしは解釈した。
思い出すのは、私が、担当していた案件で、社内のプロジェクトを作ろうと思い、役職者に説いて回った時のことだ。批判も含めて議論の機会を持ってほしかったのだが、興味を示す人は稀だった。
初めは、皆が仕事に忙しくて余裕がないからだと思っていた。しかし、話していくうちに、あることに気づいた。忙しいからではなく、意味を感じて自律的に仕事に取り組んでいない人(そのときの私もそうであった)は、他のことにも興味を示すことができないのだ。
本書p.38
※強調は引用者による。
なるほど。
「会社が嫌いになる」というのは、そういう意味だったのか。
誰も主体的に仕事をしていない
つまり「会社が嫌い=自律的に仕事していない=会社の仕事に興味が持てない」ということなのだ。
自分の担当業務に興味が持てないから仕事が面白くない。
同僚が何をやっているのかなんて、なおさらどうでもいい。
お金のためとはいえ、家族のためとはいえ、興味がない事を毎日10時間近くやらされる……そりゃ人生つまらないだろう、辛いだろう。
「働く」の定義が堕落している
日本では残念ながら「働く = 会社でイヤイヤ仕事する」となってしまっている。
他人の決めたルールの上で動いたり、他人が作ったシステムの「中の人」になることだ。
だから、自分で仕事をコントロールする余地があまりない。
権限は大して与えられず責任ばかり重くなり、無力感を感じる毎日。
これ以上ここにいても「お金がもらえる」以外の意味がないのではないか。
人生のターニングポイント
40歳を過ぎて人生も後半なのに、本当にこれでいいのか……
という気持ちが大きくなってくるのが40代なのではないか。
本書を読んで、「早期退職というのは他律的な人生から自律的な人生への転身」だと思った。
他人に振り回されるだけの人生から、自分で決断して行動する人生への大転換が「早期退職」だ。
本書は「会社が嫌になったらさっさと辞めて自分のやりたいことをやりましょう」とすすめている本ではない。
「自分で考えて自分で行動しないと後悔する人生を送る」と悟ってしまったサラリーマンのために考えるきっかけを与える書だ。