『働かないの―れんげ荘物語』(群ようこ(著))を読んだ。
東京の大手広告代理店に勤務していた45歳の独身女性「キョウコ」が、早期退職して安アパート「れんげ荘」で貯金取り崩し生活をする物語『れんげ荘』(ハルキ文庫, 2011)の続編だ。
45歳で早期退職して、48歳になったキョウコはまだ「月10万円の貯金取崩し無職生活」を続けていた。
四十八歳になったキョウコは、まだれんげ荘に住んでいた。他に引っ越すあてもないし、積極的に引っ越し先を探しもしなかった。貯金生活者というと、巨額の預金があるように聞こえるが、実態は月々十万円しか生活費が使えない、綱渡りの生活である。しかしキョウコはそれが楽しかった。
p.3 冒頭
無職で無収入になるけど、人生が楽しい
そう、確かにサラリーマンを退職してセミリタイア生活になると使えるお金は減るが、「楽しい」のだ。
サラリーマンをやっていては絶対味わえない、GWや盆暮れでちょっと「長期連休」しただけでは味わえない楽しさがある。
自分は人生に対して気楽になろうとして、会社をやめる決意も、再就職をしない決意もしたのだから、あれこれ気になるのだったら、定収入を得られるように働けばいいのだ。気持ちが揺らいでいる自分が情けなくなってきて、キョウコは二階の窓から見える隣家の庭木を見ながら、あれこれ考えるのはやめたくなった。
p.149
楽しい無職生活を送っているように見えて「こんなことをしていて大丈夫だろうか?」という不安が見え隠れする。
「あれこれ考えるのはやめたくなった」だから、彼女の本音は「働きたくないの」だ。
無職で不安を感じるなら
リタイアして、貯金不足で将来に不安を感じているのなら「働いて定収入を得る」のが一番手っ取り早い不安解消法だ(でも「働きたくない」んでしょう?)。
早期リタイア生活ってどんな日常なのか、どうやって人生を楽しみ、何を悩むのか、覗いてみたい人は一読の価値がある。
本書は『れんげ荘』の続編だが、前編を読まなくても十分楽しめる。
しかし、高給取りの大手広告代理店を45歳で早期退職して貯金取り崩し生活に至る経緯を詳しく知りたければ、前編を読んでください。