榎本まみ『督促OL業務日誌 ちょっとためになるお金の話』(メディアファクトリー, 2013) を読んだ。
著者は信販会社のコールセンターに勤務していて、借金の延滞者に督促電話をかけるのが仕事だ。
本書は「お金のために将来不安を感じたくない」ならば読んでおくべき1冊だ。
老後貧乏にならないための金融知識を必ず身につけることができる。
大手メディアから「老後貧乏」を煽られて不安になる必要はない。
お金があるから人は優しくなれる
本書を読んで
「人間は本当にお金に困って余裕がなくなるとケダモノになるのだ」
と、ちょっと怖くなった。
返済を督促する電話をかけると、逆ギレしてくる客もいるらしい。
最初はとても優しかったお客様が、返済が滞りはじめるにつけて少しずつとげとげしい態度をとるようになり、最後は恫喝するまでになってしまうことがありました。でもお客様が私たちに怒鳴るのは、お金のせいなのです。お金がないと人は優しくなることができないのです。
p.2
もし、家族や友人でお金に困る者がでてきて人格がどんどん荒んでいくと思うと、ちょっと怖い。
家族や恋人に知らせずにこっそり借金して返せなくなって追い詰められるケースも多いそうだ。
お金に困っても身近な人や貸主にも相談できず、一人で悩んでどんどんドツボにはまっていく……お金に困る一番大きな原因はコミュニケーション能力の欠如だ。
もしお金に困ったら「生活福祉資金」
自分はちゃんとお金の管理をしていても、コミュニケーション能力がバッチリでも、突然リストラされて無収入になるという可能性はある。
もし、無職でお金がなく、頼る家族も友人もいないという場合に使えそうなのが、本書で紹介していた厚生労働省の「生活福祉資金」だ。
参照生活福祉資金貸付制度 (厚生労働省)
上記サイトによると、連帯保証人がいる場合なら無利子で、連帯保証人なしなら年利1.5%で融資が受けられる(2018.6.1 7:08時点)。
生活費だけでなく、子どもの教育費、敷金・礼金も貸してくれる。
もし家族がいて連帯保証人になってもらえれば「無利子」で「最長20年」借りることができる。
マイホームを持っている高齢者ならば、マイホームを担保にして借りることもできる。
日本に住んでいる限りお金に困るケースはない
本書を読んで思ったのは「日本に住んでいる限り、貯金がなくてもお金に困るケースはない」ということだった。
金融業者から借金して返済が苦しければ、相談すればリスケジュールできる。
本当に返せそうになければ任意整理や自己破産で負担を軽くしたり借金をチャラにできる。
低所得や高齢で生活費に困ったら「生活福祉資金」で無利子または低金利でお金を借りられる。
病気の治療で費用がかかっても「高額療養費制度」でお金が返ってくる。
収入も貯金もなければ生活保護でお金がもらえる。
過剰に貯金をためこまなくても、現行の制度を利用すればよほどの不運がない限り「お金に困る」ケースはほとんどない。
日本に住んでいる限り、お金の心配をしたり、イライラする必要はない。
つまり、やりたいことをやって人生を楽しめる。
そのためには、金融知識とコミュニケーション能力が少しあればいい。
▼文庫版
目次
第1章 今日も怒られてます(貸せない理由と借りたい理由/督促というお仕事/友達から借りて返します)
第2章 濃すぎるお客さまの濃すぎる事情(内緒で借金をする人々/お金持ちほどこわい借金/彼氏にみつぎ、旦那にみつぎ、息子にみつぐ女たち)
第3章 もうお金にふりまわされたくない!(借金男子の見抜きかた/優しさを作るのはお金である/借金を呼ぶモノたち)
第4章 それでもお仕事は続く(借りるときには利息に注意!/借金のはじまりは人間関係/信用(クレジット)は誰がために?)