クリスマスにふとゲーテ『ファウスト』(集英社文庫ヘリテージシリーズ 2004) を読み返したくなり、今も読んでいる。
ブログで文章を書く機会が多くなり、いまいち読者に「伝わっていないな」と感るとき、『ファウスト』の主人公ファウスト博士の次のセリフが心に刺さる。
気持ちがのっていなくては、いくら話し上手でも何にもならんさ。心がこもっていなくちゃあね、胸にグッとくるものがなくてはだめだ。机の前で言葉をひねくりまわしていても、どうなるものでもない。よそからのいただきものでデッチあげるのは、灰をほじくり返して、ちっぽけな火玉をかきたてるようなものさ。まあ、ちょいと気どって見せれば子どもや猿は拍手喝采するかもしれないが―。心の底から出てこなくては、人の心に届かない。
「第一部」p.40
「心の底から出てこなくては、人の心に届かない。」というのは、「伝えたい!」と心から思えなければ、何を言っても相手に伝わらないということだと思っている。
気持ちがのっていない時は、アウトプットはしないほうが良さそうだ。
文章力とともに話術も必要だと思うが、「話術」のようなスキルを向上させることについても、ファウスト博士は次のように切って捨てる。
口先三寸で稼ごうというのかね?おしゃべり上手のバカになりたいのか?しっかりした考えがあって、それに勘がよければ、あれこれ技巧を弄さなくても、おのずといい話ができるものだ。話したいことさえあれば、話し方はどうでもいい。これみよがしに飾りたてても、それは秋になると枯れ葉に吹きつけてくるしめっぽい風ってもので、ただ気色が悪いだけだ。
「第一部」p.41
「話したいことさえあれば、話し方はどうでもいい。」
「変にテクニックを駆使して話しても、気持ち悪いだけ」とファウスト博士は言う。
これはブログに置き換えたら、
「書きたいことさえあれば、書き方はどうでもいい。」
と言える。
ブログの中身にこだわって書けないでいるときは、
「ああ、書くことがないのだな」
と思うことにしている。