『経営者・平清盛の失敗 会計士が書いた歴史と経済の教科書』(山田 真哉 (著), 講談社, 2011)を読んだ。
会計本が好きなので、著者の本は『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』や『女子大生会計士の事件簿』などなど、よく読んでいる。
本書は「なぜ、強大な財力や権力を持っていた平家があっというまに滅亡したのか?」という疑問に答えている。
わたしは本書を読んで「お金に過剰に依存すると、たとえ日本有数の大金持ちであっても簡単に滅亡する」と感じた。
「使い切れないほどの大金を持っているから一生安泰」という考えがいかに危ういか、本書を読んで痛感した。
平家は「デフレ長者」
平家一族が「平家にあらずんば人にあらず」と言われるほどの超大金持ちになれたのはなぜか。
ひとつは「宋銭の流通」があった。
宋銭とは中国の当時の王朝である「宋」から輸入した貨幣(コイン)だ。
なぜ日本で外国の通貨である宋銭が普及したのかは本書を参照してほしい。
日本で宋銭をほしがる人がふえていったので、宋銭の価値が高騰していった。
その宋銭の輸入と流通を独占したのが平清盛だった。
日本経済はコメのような「モノ」よりも宋銭という「カネ」の価値が上がっていくデフレになった。
結果、宋銭をたくさんもっている平家が大金持ちになった。
逆に、平家に比べて宋銭を持っていない他の貴族や寺社は相対的に貧乏になった。
大金持ちが突然貧乏に
しかし、「ある事件」が勃発して、超大金持ちの平家が貧乏になった。
何が起こったのかをここで明かすと「ネタバレ」になるので本書を読んでほしい。
その事件を境に、宋銭の価値が激減したのだ。
財産のほとんどを宋銭で保有していた平家は没落していった。
平家は宋銭に「集中投資」していたから、宋銭の暴落で日本で最も大きな被害を受けた。
まさに「大金持ちゆえに大貧乏になる」という皮肉な結果になった。
そして、壇ノ浦で源氏に滅ぼされる。
おごれる者久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
出典『平家物語』冒頭
お金に過剰に依存する人生は危うい。
とはいえ、お金はあった方がいいに決まっているが。
平家みたいにあっという間に滅亡しないよう、分散投資しましょう。