『名画で読み解く プロイセン王家 12の物語』(中野 京子(著), 光文社新書, 2021)を読んだ。
プロイセン王家ゆかりの絵画を鑑賞しながらドイツの歴史が学べる。
本書を読んでわたしが「ひどい!」と感じたのが「国王のあだ名」だ。
ニックネームと言うより悪口に近い。
プロイセン国王9代のあだ名
歴代のプロイセン国王9人の名とあだ名を挙げる(本書 pp. 40 – 41 参照)。
初代 フリードリヒ1世(猫背のフリッツ)
2代 フリードリヒ・ヴィルヘルム1世(兵隊王)
3代 フリードリヒ2世(大王)
4代 フリードリヒ・ヴィルヘルム2世(デブの女たらし)
5代 フリードリヒ・ヴィルヘルム3世(不定詞王)
6代 フリードリヒ・ヴィルヘルム4世(ひらめ)
7代 ヴィルヘルム1世(白髭王)
8代 フリードリヒ3世(我らがフリッツ)
9代 ヴィルヘルム2世(最後の皇帝)
まともなあだ名は3代の「大王」や「白鬚王」「我らがフリッツ」くらいか。
わたしが「?」と思ったのは5代の「不定詞王」だ。
不定詞王って何?
不定詞王
5代国王のフリードリヒ・ヴィルヘルム3世が「不定詞王」と呼ばれた理由は「彼の話し方」だ。
主語を使わず、動詞を人称変化させずに使った。
ドイツ語を知らない人はわかりにくいと思うが、「わたしはここにいる」をドイツ語で言うと「Ich bin hier (= I am here)」なのだが、不定詞王は主語を省略して動詞は不定詞のまま「hier sein (= here be) 」と表現した(本書 p. 97)。
※英語の「be」にあたるドイツ語は「sein」で、主語が一人称(ich)のときの現在形は「bin」となる。
日本語で言うと「予はここにおるぞ」と言わず「ここ、いる」みたいに必要最小限の表現ですませた。
経済は好調・皇位継承は安泰……でも滅亡
時代は下って9代の「最後の皇帝」ヴィルヘルム2世時代の前半は順調だった。
経済は順調に発展して、国民の間に大きな分断はなく、人々は将来に希望を持っていた。
皇帝の世継ぎは6人いて、皇位継承は「安泰」だった。
「安全・安心」を絵に描いたような国だった。
しかし、1914年に第1次世界大戦が勃発して1918年には敗戦国となり、プロイセン王家とドイツ帝国は滅亡した。
いくら不安要因がゼロでも「国家も一寸先は闇」だ。