貿易赤字は悪ではなく、複式簿記を知らないことが悪

貿易黒字は良いことで貿易赤字は悪いことなのか?

結論から言えば、家計の黒字、赤字と一緒にしてはいけないということだ。

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貿易赤字は悪いこと?

菅原晃『高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学』によると、高校生向けの「政治・経済」「現代社会」教科書には貿易赤字が悪で貿易黒字が善とは書かれていないという。

輸出超過の状態では貿易・サービス収支は黒字となる。海外直接投資が多ければ資本収支は赤字になる。「赤字が悪で黒字が善」というとらえ方は国際収支の定義からも正しくないし、黒字と赤字は、その国が世界経済の中ではたしている役割を考えて評価すべきである。

「ニュースタンダード 資料現代社会」実教出版(2012) p.286

「赤字が悪で黒字が善」ととらえてしまうのは、

「収入-支出」は常に黒字でないとダメで、コツコツと貯金を積み上げていくことが堅実な生き方だ。外国人から借金をするとあとで怖い目に合うから絶対にダメだ。

という個人の生き方を国家間の貿易にあてはめようとしているからだと思われる。

そもそも貿易収支を理解するには複式簿記や会計の知識が必須で、それを知らなければ「貿易黒字」「貿易赤字」の中身は理解できない。

日本のマスコミ報道では、貿易赤字は悪いことで「転落」を意味する。貿易赤字悪玉論は次のような感じだ。

貿易立国・日本が足元から揺さぶられている。モノの輸出額から輸入額を差し引いた昨年の貿易収支は、過去最大の赤字を記録した。貿易赤字は3年連続だ。とくに昨年はアベノミクスで円安が進んだが、期待したほど輸出が伸びなかった。このまま貿易赤字が定着すれば、モノやサービス、金融を合わせた経常収支も赤字に転落する懸念がある。輸出回復に向けた構造改革が問われている。

揺さぶられる貿易立国・日本 貿易赤字、過去最大(2014.2.2 産経)


「貿易赤字は悪い」と思う原因は次の3つの思い込み(妄想)にあるのではないか。

①黒字は善で、赤字は悪
②貯金は善で、借金は悪
③日本人投資家は善人(損得を考えない愛国者)で、外国人投資家は悪人(損得しか考えないハゲタカ)

実際の貿易黒字、貿易赤字というのは「国際収支表」の左側に記載されている「貿易収支」のことだ。プラスなら黒字、マイナスなら赤字となる。貿易黒字だった2007年と、貿易赤字だった2013年の国際収支表は次のようになる。

kokusaishushi

▲出典:国際収支総括表(財務省HP)、単位:億円

2007年は約12.3兆円の貿易黒字で、2013年は約10.6兆円の貿易赤字。

反対に2007年の資本収支は約22.5兆円の赤字、2013年の資本収支は約4.6兆円の黒字。

貿易収支と資本収支は裏腹の関係にある。

日本人よ、世界の富を独占したいのか

ざっくりといえば、
貿易黒字 → 資本収支赤字(日本から海外へお金が流出している)
貿易赤字 → 資本収支黒字(海外から日本へお金が流入している)
といえる。

つまり、「貿易赤字より貿易黒字の方がいい」というのは「資本収支黒字より資本収支赤字がいい」と言っているのと同じで、ここで「赤字より黒字のほうがいい」という論理は崩れる。貿易黒字かつ資本収支も黒字というのは定義上絶対無理だ。

貿易収支は黒字がいいが、資本収支は赤字の方がいい、というなら「資本は国内から海外に流出する方がいい」と言っていることになる。例えば「日本人が外国株、外国債を買うのはいいが、外国人が日本株、日本国債を買うのはだめ」というのと同じ。

何で「資本収支は赤字のほうがいい」のだろう?

外国人投資家(ハゲタカ?)に日本企業の株や日本国債を買われることが不気味なんだろうか?

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