三菱商事の赤字は「新興国株の高値づかみ」が原因

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copper plate

三菱商事(8058)が2016年3月度決算で赤字になった原因を調べてみた。

「総合商社」という日本最大級のサラリーマン組織は、実はハイリスクな株式投資家だったということがわかった。

サラリーマン組織である三菱商事は「汗水たらしてお金を稼ぐ」というイメージが強かったが、実際は投資から上がる配当金や売買益で食べているのだ。

参照三菱商事、16年3月期最終赤字1500億円 銅事業などで減損 (2016.3.24 日本経済新聞)

上記記事によると、赤字の理由は「チリの銅事業などによる減損損失で、計4300億円を計上」するためだ。

三菱商事のプレスリリースを見てみた。

参照通期連結業績予想の修正及び減損損失の発生に関するお知らせ (2016.3.24 三菱商事)

プレスリリースによると、「アングロ・アメリカン・スール社(AAS社)」へ出資した「チリ銅事業」で2800億円の損失を計上する。

赤字の合計額▲4300億円のうちの▲2800億円だから、65%がAAS社の減損が原因だ。

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損切り

「減損」とは……会計に詳しくないからうまく説明できないが、簡単にいえば「損切り」だ。

AAS社という新興国株を買ったけど儲かりそうにないから2800億円の損失を確定(損切り)することにした」ということなのだ。

さらにネットで調べると、こんな記事があった。

「【ドラマ・企業攻防】チリ銅山めぐり三菱商事・三井物産 リスク乗り越え資産獲得」 (2012.9.23 産経新聞)

日付が2012年なので、4年ほど前の記事だ。

この記事を読むと、三菱商事がAAS社の株を購入した経緯がわかる。

当時、新興国経済が成長を続けていて「銅」の需要がうなぎのぼりで高まっていた

銅事業を手がけるAAS社の株の購入を持ちかけられていた三菱商事は「こんなチャンス二度とない」と判断して、AAS社の株を約4200億円で購入した。

2001年のローソンへの出資を上回る三菱商事史上最大の投資となった。

銅バブル

当時は新興国経済の成長を当て込んで、世界中で「銅事業の奪い合い」が起こっていたようだ。

記事では、

“高値づかみ”との批判を受けてまでこだわったチリの銅権益。この事業でどう成果を生み出すか、両社の事業戦略が問われるのはこれからだ。

と結んでいる。

「両社」というのはAAS社株を購入した三菱商事と三井物産のことだ。

結果は、両社の創業初の赤字ということになった。

株は怖い。

教訓

三菱商事の赤字について調べて、個人投資家として次のような教訓を得た。

  • 「こんなチャンス二度とない!」と熱くなって買った株は「高値づかみ」している可能性が高い。
  • 損切りはお早めに。
  • 総合商社という日本最大級のサラリーマン組織は、実は株式投資で食べていた。

大手商社のトップたちは口をそろえていう。

「商社とは、敗者復活の連続なんですよ」

と。そしてまた付け加える。

「どんなことがあろうと、元気がなくなったら、商社マンはおしまいです」

出典城山三郎『打たれ強く生きる』 (新潮文庫, 1989) p. 154

<参考文献>
國貞克則『財務3表一体分析法 「経営」がわかる決算書の読み方』(朝日新書 2009)p.190 「三菱商事vs.三井物産 ~卸売業界」

日本経済新聞社[編]『会計用語辞典 』(日経文庫 2000)p.84

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