「収入が増える」というのはふつうは安心材料のはずだが、急激に増加すると「破産」につながる。
新電力会社の「日本ロジテック」の自己破産のニュースを読んで、「収入増=安泰」とはいえないケースがあることを学んだ。
参照新電力大手の日本ロジテック破産 負債総額163億円 (2016.4.15 産経ニュース)
急激な収入増が、資産運用リスク増大の原因となった。
あまりにも稼ぎすぎたために破産したのだ。
急増する売上
日本ロジテックの正式名称は「日本ロジテック協同組合」だ。
電力を一括購入して仕入価格を下げ、組合員の顧客に販売する。
売上の急上昇ぶりがすごい。
2012年3月期は売上高4億2,600万円だったが、2015年3月期は売上高約555億7,700万円と、3年で約130倍に急増した。
参照日本ロジテック協同組合の破産手続き 負債総額、71億円を超える可能性も (2016.3.16 環境ビジネスオンライン)
年収500万円のサラリーマンが始めた副業がヒットして、3年で年収6億5千万円になったようなものだ。
しかし、破産した。
破産の原因
売上が急上昇したのに破産したのは「資金繰りの悪化」だとされる。
日本ロジテックは上場企業ではないので貸借対照表やキャッシュ・フロー計算書のような決算書を見ることができない。
なので上記記事から原因を拾ってみた。
業績の急拡大に伴って資金需要も増加するなか、発電所設立を目的とした子会社への実質的な資金投入も多額にのぼり、現預金は僅少にとどまるなど内部留保が脆弱化していた。
急激に売上が増えたのは顧客数が激増したからだ。
電力を大量に購入して、大勢の顧客に届けないといけない。
そのためには大量の現金が必要だ。
例えば、副業でネット通販を始めたら注文が殺到して1億円分の注文が入ったとする。
商品の仕入れ値が8000万円だとすると、1億円分の注文に対応するには8000万円の現金を用意しなければならない。
掛けで仕入れたとしてもいずれは8000万円の現金を期日までに銀行に入金しなければならない。
ふつうの商売なら、注文を断ることができる。
しかし日本ロジテックは電力会社だから「いま当社にはお金がありませんからお客様に電気を送れません」とは言えない。
それにふつうの株式会社ではなく協同組合だから「顧客=出資者(株式会社でいう株主)」だ。
電気が送られてこないことに怒った顧客が組合を脱退して資金を引き上げたら自己資本がなくなってしまい、「債務超過」になって倒産してしまう。
だから、顧客の注文をキャンセルすることは絶対にできない。
お金がないことに加えて、自前の発電所を建設するために子会社に投資していた。
発電所が完成して投資を回収できるまで時間がかかる。
それまでは、お金が固定資産(または建設仮勘定)に化けて寝ている状態になる。
結局、電力を購入・発送電できるだけのお金が用意できなくなってしまい、破産した。
まとめ
日本ロジテックの破産から個人投資家が学べることは「無理して収入を増やすと、破産リスクが増える」ということだ。
収入が増えると、支出も増える。
支出額を期日までに払えなくなったら信用がなくなり、会社は倒産となる。
もし日本ロジテックがこじんまりと年商数億円の規模で商売をやっていたら、資金繰りに困ることはなかったと思う。
急激な売上と顧客の増加で仕事量も激増して、パニック状態になったのかもしれない。
会社も個人も、ふつうは「収入増」をめざしてがんばる。
でも「稼ぎすぎに注意」。