「複利」といえば「どんどん利息がふくらんで無限に増えていく」というイメージがあった。
例えば、元本100万円を「年利7%の1年もの定期預金」で複利で50年運用すると、
100 万円 × 1.0750 ≒ 2,945 万円
となり、約30倍に膨らむ。
が、定期預金の期間を1年、6ヶ月、3ヶ月、1ヶ月と、どんどん短くしていくと、定期預金の増え方が「頭打ち」になるのだ。
「愛情の変化」は微分方程式で理解できる(2019.4.16 プレジデントオンライン)
という記事を読んで知った。
不思議な現象だ。
定期預金の満期までの期間を「1分」にしたら
元本100万円を、「年利7%・1年もの定期預金(複利)」に10年間預けることを考える。
10年後の預金額は、
100 万円 × 1.0710 ≒ 196 万円
となる。
「年利7%・1ヶ月もの定期預金」だと、
100 万円 × ((1 + 0.07/12)12)10 ≒ 200 万円
だ。
さらに満期までの期間を短くして「1日もの定期預金」にしたら、「1 年 = 365 日」とすると、
100 万円 × ((1 + 0.07/365)365)10 ≒ 201.36 万円
さらに短くして「1分もの定期預金」にしたら、「1 年 = 365日 × 24 時間/日 × 60 分/時間 = 525,600 分」とすると、
100 万円 × ((1 + 0.07/525600)525600)10 ≒ 201.37 万円
となる。
年利7%で満期までの期間が「1分」の定期預金を複利で10年間預けると、元本100万円は約201.37万円になる。
満期までの期間を1日から1分に短縮して複利で回しても、満期時の預金は100円ほどしか増えない。
さらにどんどん定期預金の期間を短くして「無限小」にしたらどうなるか。
そして定期預金は頭打ちへ
定期預金の期間を無限に小さくするとどうなるか。
上記記事によると、
100 万円 × (e0.07)10 = 201万3,752円
となる。
定期預金の期間を極限まで短くしたら、元本100万円の運用結果の上限は約201万3,752円となる。
ここで、いきなり「ネイピア数(e)」、またの名を「自然対数の底」という数字(e = 2.71828…)が出てきた。
なぜ「e」が出てくるのか、記事には説明がなくわからなかったので調べてみた。
定期預金とネイピア数
ネイピア数(e)の定義は、
\begin{aligned}\left( 1+\frac {1}{x}\right) ^{x}\end{aligned}
において、xを限りなく大きくしていったときの数だ。
つまり、xがどんどん膨らんでいくと、上の式の数字は限りなくe(=2.71828…)に近づいていく。
高校数学で習ったと記憶している数式で書くと、
\begin{aligned}\lim _{x\rightarrow \infty }\left( 1+\dfrac {1}{x}\right) ^{x}=e\end{aligned}
となる。
年利7%の定期預金の満期までの期間を無限小(xを無限大)にすると、
\begin{aligned} 1年後の満期時の金額 = \lim _{x\rightarrow \infty }\left( 1+\frac {0.07}{x}\right) ^{x}\end{aligned}
y = x/0.07とすると、
\begin{aligned}\lim _{y\rightarrow \infty }\left( 1+\frac {1}{y}\right) ^{0.07y}=\lim _{y\rightarrow \infty }\left\{ \left( 1+\frac {1}{y}\right) ^{y}\right\} ^{0.07}=e^{0.07}\end{aligned}
となるので、この定期預金に元本100万円を10年間預けた場合、10年後の金額は、
100 万円 × (e0.07)10 = 201万3,752円
となる。
(数式が多くてすみません)
参考文献『ビジネス数学入門〈第2版〉』(芳沢光雄(著), 日経文庫, 2018)pp. 113 – 114