佐藤優・石川知裕『逆境を乗り越える技術』 (ワニブックスPLUS新書 2014)を読んだ。
著者のふたりはそれぞれ外交官、衆議院議員在職中に東京地検特捜部に逮捕・起訴され、有罪判決を受けた。
「エリートから犯罪者」という「究極の逆境」を体験したふたりの対談本だ。
テーマは「具体的にどうやって逆境を乗り越えればいいのか」。
抽象的な精神論ではなく具体的な方法が書いてあるところがいい。
特に、仕事や人間関係で悩みすぎて精神的に追い詰められている人には一読の価値がある。
本当に好きなことだったら絶対に食っていける
わたしが「その通り!」と思ったのは「仕事選び」について。
石川 結果的に自分の希望する職業に就けた人は幸せですよね。
佐藤 『私のマルクス』(文春文庫)でも書きましたが、高校の倫理・社会の先生に「自分が見ている限りにおいて、本当に好きなことをやって食っていけない人はひとりもいない。だから『下手の横好き』というのは、本当に好きなことじゃないんだ。本当に好きなことだったら絶対に食っていける」と言われたことがあります。たしかにそんな感じがします。本当に好きだという人だったら、やっぱりそれに関することで飯を食っているケースが多く見られますね。
本書p.118
「本当に好きなことをやって食っていけない人はひとりもいない」という言葉は、「好きなことばかりやっていて本当に生活できるのか?仕事で我慢や苦労をしなくていいのか?」と悩んでいる人には救いの言葉だ。
もし、いまやっている仕事を「ミスマッチ」と感じたらどうすればいいのか?子供の頃に抱いた「将来就きたい職業」はどの時点で「あきらめる」べきなのか。これから食える資格・食えなくなる資格は何か。詳細は本書で。
住宅でプライドを捨てる
好きなことを仕事にしたけど収入が減ったらどうする?
その場合は「住宅でプライドを捨てればいい」。
佐藤 金なしの生活を送るときのポイントは何かというと、住宅です。住宅で見栄を張らない。要するにカンカンアパートでシャワーがついているくらいで、都内でも家賃が三、四万円で抑えられれば、生活は相当楽になります。そこから一定の貯蓄ができるから上昇していくことは可能です。
最初から無理して家賃十二、三万円のワンルームに入ってしまうと、仮に月給が十五万円入ってきても、二、三万円で生活しなきゃいけなくなります。そういうスタイルは絶対採るべきではありません。
とにかくどこでプライドを捨てるかというと、住居で捨てないといけない。というのも、日本は異常に住居費が高くつくから。
本書p.142
日本人は仕事で変に妥協して(嫌な仕事を続けたり、嫌いな人に頭を下げたり……)、住宅で見栄を張る人が多すぎる。だから給料が上がっても苦しいのではないか。
その逆をいって、
好きなことを仕事にして、住宅でプライドを捨てる
これだけで何百万倍も幸せになれるのではないか。