論理的に考え、合理的に行動できなければ、生き方を自由に選択できる現代社会では幸福になれる確率は低い。
新井紀子『生き抜くための数学入門』(イースト・プレス, 2011) を読んで、そう感じた。
本書はタイトルの通り、数学を学ぶことで「論理的に思考して、合理的に行動する」ことにより、
現代社会で幸福に生きる確率を上げる
ことを目指す本だ。
数学力は民主主義社会に必須
いままで「中学・高校でやった数学なんて実社会で役に立たない」
と思っていた。
実際、社会人になって仕事で「微分・積分」を使った記憶はない。
しかし、微分・積分の問題を解くことはどうでもよくて、「数学の問題を解くときに必要な論理的思考力」が実社会で役立つのだ。
論理的思考力とは、与えられた問題について「だから」「どうして」「どうなるか」、を考えることだ。
なぜ論理思考力が必要かといえば、いま生きている社会が「選択の自由」を前提とした民主主義社会だからだ。
例えば、こんな選択。
- どこに住むか
- 仕事は何をするか
- 転職すべきかどうか
- 定年前に退職すべきか
- 貯金が3,000万円たまったけど、早期リタイアすべきか
- 株に投資するなら、何を買うべきか
- マイホームか賃貸か
- 選挙でどの候補者に投票すべきか
などなどについて、自由意志に基づいて「選択」することが求められる。
民主主義というのは「市民が論理的に思考して合理的に行動できる」ことを前提に成り立つ社会だ。
不幸を選択しないために
考える力がなければ、うまく言いくるめられたり、感情論で煽られたり、「みんながやっているから」と思考停止したりして、誤った選択をしてしまう確率が高い。
「誤った選択」というのは、つまり「不幸」になることだ。
他人にダマされず、自由に生きて幸福になりたければ、数学を勉強しろ
が結論となる。
ただし「完璧に論理的に考えても解けない問題が存在する」ことが数学的に証明されているらしいので、奥が深い。