忘年会のシーズンで「一発芸」を強要させられるひとが多いのではないだろうか。
特に新人は。
津田秀樹『ジーパンをはく中年は幸せになれない』 (アスキー新書, 2009) を読んでいて、その原因がわかった。
ちょっと怖いから、心して読んでほしい。
「社畜」は宴会芸で作られる
なぜ、会社では宴会で新人に「恥ずかしい芸」をさせるのか?
それは「支配するため」だ。
本書によると、人間は「人前で恥をかくと、他人に服従しやすくなる」らしい。
米軍が捕虜をハダカにしてホースで水をかけたり、野球部の監督が部員をハダカにして運動場を走らせたりした事件がありましたが、そうやって徹底的に恥をかかせると、反抗的な者でもいうことをきくようになるからです。
(中略)
昔から、会社などの新人歓迎会で、新入りが恥ずかしい宴会芸をやらされるのも、そうやって恥をかかせておくとあつかいやすくなるということを、上司は本能的に感じているからです。だから芸をやらないことを許さないのです。
pp.175-176
つまり、
上司や先輩は、新人が「恥ずかしい宴会芸」をやることで「こいつは俺達に従順だ」と確認する。
もし拒否すると「この新人は俺達の支配を拒んでいる」と思われてしまう。
だから、新人は恥ずかしくても芸をやるしかないのだ。
その結果、「恥ずかしい芸」をやった新人は、上司や先輩に無批判に従う「社畜」となる。
「支配欲」に気づく
では、宴会芸を強要された新人は泣く泣く社畜になるしかないのか?
そんなことはない。
もし、宴会で「芸」を強要されたら、
「人前で恥をかいたら他人に服従しやすくなる。気をつけよう」
と「意識」することだ。
もし、「恥をかかせよう」としてくる人がいたら、「こいつは自分を支配しようとしているんだな」と認識できる。
逆に、目下の人間に「恥をかかせよう」としていたら「目下の人間を支配したい」という欲ががあることに気づくことができる。
「人間とは、”成功”することより”自尊心を守ること”に一生懸命になる生き物」なのだな、と感じる1冊だった。
目次
はじめに
第一章 不幸を招く意外な法則
ジーパンをはく中年は幸せになれない
正論を言いだすとモラルが低下する
親切にしすぎると仕返しされる
大人買いでは心は満たされない
甘いものを食べると、不幸感が高まる
幸福には3種類ある——成功しても心が満たされない第二章 あえて不幸な選択をする心理の仕組み
大切な仕事の前日ほど深酒がしたくなる
チャンスをライバルにゆずってしまう
成功を捨てて確実に失敗する仕事を選ぶ
いちばん好きなものを、なぜか選べない
5分遅れないために命をかけてしまう
「こういう女はダメだ」と言いながら、そういう女と浮気する
なぜ大学教授が痴漢をするのか?
恥をかかされた相手に従ってしまう第三章 環境に影響されて不幸に導かれる
みんなで考えると間違える
人数が増えると手抜きをしてしまう
95%の看護師が危険な薬を投与してしまう
不幸がうつるのはなぜか?
会えない時間が愛を育て、憎しみを育てる
「その歳から始めたって無理」が人生のピークをつぶす