人気のある投資信託のひとつに「毎月分配型投信」がある。
参照毎月分配型投信の「分配金」の実態とは?(2018.6.8 プレジデントオンライン)
毎月分配型投信はどうやって分配金を作っているのか?
具体的な方法を知りたくなって、調べてみた。
ちなみに、わたしは毎月分配型投資信託は持っていない。
分配金の作り方
例えば、「損保J日本興亜-好配当グローバルREITプレミアム・ファンド 通貨セレクトコース」という毎月分配型投資信託がある。
「REITプレミアム(カバードコール)戦略」という手法を使っている。
以下、「カバードコール戦略」と呼ぶ。
この投資信託はREIT(不動産投資信託証券)を保有している。
単にREITを保有しているだけでは高い分配金は出せない。
無理に分配金を出そうとすると、REITを売却して現金化しなければならない。
それだと、貯金を取り崩しているのとほとんど同じなので、個人投資家でも「毎月分配型投信」を作れてしまう。
銀行の普通預金口座にお金を入れて、毎月ATMで引き出せばいいだけだ。
芸がない。
ここで、「カバードコール戦略」というオプション取引(ギャンブルの一種)を利用して分配金を作る手法が登場する。
わたしにオプション取引の知識がなかったので、理解するのに苦労した。
<参照記事>
毎月分配型投信「第4世代」のひどすぎる手口 (2015.7.22 山崎元のマルチスコープ(DIAMOND online))
コール・オプションの仕組み (オプション道場)
カバードコール戦略
REITを売却せずに、分配金として配る現金をどうやって作っているか。
答えは、「コール・オプション」を売って分配金を作っている。
手持ちのREITが将来値上がりした時の利益を放棄する代わりに、分配金のための現金を今すぐゲットしているのだ。
簡単に言えば「1年後の1万円より今日の5000円」だ。
コール・オプションは参考記事を元に説明するとこうなる。
今、とある毎月分配型投信が1株1000円のREITを2株(2000円)持っていたとする。
分配金を作るために、「1ヶ月後にREITを1株1000円で買える権利」を投資家に100円で売るとする。
これで、REIT(2000円)を取り崩さずに現金100円を手に入れることができた。
100円を分配金として配る。
1ヶ月後、REITの価格が1000円から950円に値下がりしたとする。
「1ヶ月後にREITを1000円で買える権利」を買った投資家はコール・オプションの購入代金100円分、損して終わる。
950円のREITを1000円で買っても何のメリットもないからだ。
毎月分配型投信は資産総額が2000円から1900円に下がる分、基準価額が下がる。
将来の利益を放棄
もし、1ヶ月後にREITの価格が1000円から1200円に上ったらどうなるか。
「1ヶ月後にREITを1000円で買える権利」を買った投資家は、1200円のREITを1000円で買えることになる。
毎月分配型投信は手持ちの1株1200円のREIT2株のうち、1株を1000円で売らなければならない。
本来なら200円の含み益が出るはずなのに、放棄しなければならない。
毎月分配型投信の資産はREITが1株(1200円)と、コール・オプションの行使によるREITの売却代金(1000円)の合計2200円となる(分配金の100円は除く)。
「カバードコール戦略」を用いなければ、資産総額はREIT2株で2400円のはずなのに、2200円となった。
これが「カバードコール戦略」のリスクだ。
何が何でも毎月分配金が欲しいか?
ふつうにREITを保有して、決算期だけ配当金をもらったり値上がりを期待して待つだけならば、「カバードコール戦略」は不要だ。
「株を買って持っておく」といったような、もっとシンプルな投資をしていれば信託報酬などの手数料を抑えることができるだろう。
この手の投資信託を買う投資家には「将来の利益を放棄してでも、どれだけコストがかかっても、どんなハイリスクな手法を使っても、何が何でも毎月分配金が欲しい!カネ!カネ!カネ!」という執念があるのかもしれない。