先日、「毎月分配型投信はどうやって分配金を作っているのか」という記事を書いた。
毎月分配型投信が高い分配金を出せるのは「コール・オプションを売る」という手法を使っていることを書いた。
毎月分配型投信と同じやりかたで「好金利」を出しているのが「仕組預金」だ。
つまり、「コール・オプションを売る」ことで、ふつうの定期預金よりも高い金利が実現できる。
しかし、高い金利の裏にはリスクが潜んでいる。
「将来の利益を放棄する」というリスクだ。
仕組預金というギャンブル
実例を某ネット銀行の仕組預金で見てみる。
年利は0.25%(税込)で預入期間は最低1年、最長10年となっている。
同銀行の定期預金(1年)の年利が0.03%(税込)だから、8.3倍以上の高金利だ。
一般的な定期預金よりも高い金利を預金者に払うために「コール・オプション」を売っている。
誰が誰にコール・オプションを売っているのか。
預金者が銀行にコール・オプションを売って、金利を上乗せしている。
いやいや、預金者は銀行にお金を預けているだけでしょう?
預金者は「リスクを回避したい」から銀行にお金を預けているはず。
確かに、普通預金や定期預金なら「預金者は銀行にお金を預けている」と言える。
しかし、「仕組預金」は預金者が銀行に「コール・オプションを売る」という「ギャンブル」をやっているのだ。
※コール・オプションについては前回記事参照。
ギャンブルの内容
預金者は銀行を相手に「今後10年の金利を当てる」ギャンブルをやる。
預金者は「年利0.25%、預入期間10年の定期預金はお得」な方に賭ける。
今後10年低金利政策が続いたら、10年ものあいだ0.25%の高金利をゲットできるので預金者の勝ち、、、とはならない。
もし、低金利政策が続きそうだと銀行が判定したらこのギャンブルは終了する。
銀行は最短1年で仕組預金を解約して、預金者に元本+年利0.25%分の利息を返金する。
本当はコール・オプションを売って元本の0.25%よりも大きな収益を確保していると思うが、銀行は利益としてしっかり抜いて、預金者には年利0.25%分を「利息」として渡す。
逆に、インフレになって低金利政策が終了して、金利が上がってきたとする。
例えば、普通預金金利が0.50%になったとする。
預金者は年利0.25%の仕組預金を解約して0.50%の普通預金に切り替えたいと思う。
しかし、銀行は普通預金で年利0.50%払うのは嫌なので、年利0.25%の仕組預金を解約せずに最長10年継続する。
預金者は他の有利な預金に切り替えるチャンスを奪われる。
つまり、預金者は低金利、高金利、どっちに転んでも銀行が勝つギャンブルをさせられているのだ。
仕組預金は最長10年で、解約するかどうかは年1回、銀行が判定する。
結果、預金者は0勝1敗~0勝10敗、銀行は1勝0敗~10勝0敗の成績となるように仕組まれている。
日本人はギャンブルが好き?
今回紹介した仕組預金、先日紹介した毎月分配型投信には「コール・オプション」というギャンブルが組み込まれていることがわかった。
恐らく、リスクを回避して確実に現金(利息、分配金)が欲しいから仕組預金や毎月分配型投信に手を出しているのだと思う。
しかし、実態は虎の子のお金でギャンブルをやって日銭を稼いでいる。
日本人はリスクを回避したがる人が多いように思えて、実はギャンブルで稼ぐのが大好きなのだ。
<参考記事>
リスクのある仕組預金の怖さ (Money Lifehack)
満期特約型仕組み預金(マルチコーラブル預金)(Netbank Ranking)
<参考文献>
橘玲『臆病者のための株入門』 (文春新書, 2006) pp. 178 – 180「ぼったくりを目的とする商品」
吉本佳生『金融広告を読め どれが当たりで、どれがハズレか』 (光文社新書 , 2005) pp. 141 – 190 「第三章 『長期預金』の広告――インフレの恐怖」
※上記は2016年4月20日現在の情報です。