アラフィフ無職で貯金はたくさんあるが世間がうるさいから働いているふりをする侍

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神田駅

井原西鶴『日本永代蔵』の「見立てて養子が利発」というエピソードにこんな話があった。

一生遊んで暮らせるだけのお金があるのに、「何もせずブラブラしていると世間体が悪い」と思い込んで「働いているふり」をする侍(浪人)の話だ。

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お金があってもブラブラできない

江戸の神田明神の前に名門出身の浪人(無職の侍)が隠れ住んでいた。

年齢は50歳に近く、高齢なのでもう働く気がない。

働かなくても一生暮らせるだけの貯蓄があったので、なりゆきまかせに気楽に暮らしていた。

しかし、何もせずにブラブラするのは世間の口がうるさいと思って「働いているふり」をすることにした。

瀬戸物を売る店を開いて、店先に瀬戸物を申し訳程度に並べておいた。

世間体を保つために仕方なくやっている商売なのでやる気がなく、客の値切り交渉にも応じないので、開店して3年たっても売上がゼロだった。

無為徒食は犯罪

このエピソードに出てきたやる気のない浪人は「世間体が悪い」という理由だけで「働いているふり」をしたわけではなかった。

当時は「浪人改」といって、浪人が何もせずにブラブラしていると江戸幕府から咎められたとのこと。

浪人の無為徒食は浪人改で咎められるおそれがあった。

p.453

「無為徒食」というのは、

何もしないで、ただ無駄に毎日を過ごすこと。意味もなく時間を費やすこと。▽「無為」は何もせず、人の手を用いないこと。「徒食」は働くこともせず、無駄に日を送ること。

goo辞書

ということだ。

一生遊んで暮らせる貯金があっても「世間から批判される」「犯罪者扱いされる」では、悠々自適なリタイア生活ができなかった。

悠々自適な生活を送りたければ、養子を取って家督を譲り、「隠居」するしかなかったのかもしれない。

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