河合隼雄『こころの処方箋』 (新潮文庫 1998) を読みなおした。
メンタルヘルスが崩壊寸前のところでなんとか踏みとどまって激務に耐えている人たちにおすすめの本だ。
本書で一番好きな言葉は「ものごとは努力によって解決しない」だ。
「努力しているのに思い通りの結果がでない」と悩んでいる人が多い、と感じた著者が原因を追求していった結果、たどり着いた結論だ。
「努力」という宗教
「努力が報われない」と悩んで著者のもとに相談に訪れる人たちの話を聴いているうちに、
人間が自分の努力によって、何でも解決できると考える方がおかしいのではないか
p.91
と思いはじめたという。
「努力すれば必ず極楽に行けるという努力教」にはまって苦しんでいる人が多い。
このように考えると気がついたことは、努力しても解決できないと嘆いている人は、そのために、「自分の努力が足りないからだ」と不必要に自分を責めたり、「こんなに努力しても解決しないのは、××が悪いからだ」と考え、他人や組織やいろんなものを憎んでみたり、要するに自分の苦しみを倍加させている、ということである。「努力によって、ものごとは解決する」という考えのために、自らを不必要に苦しめているのだ。
p.91
初めは「問題が解決しない」から悩んでいたのに、いつのまにか「努力が足りない」「自分はこんなに頑張っているのに××のせいで解決できない」と、「悩みの原因」がすり替わってしまっている。
これじゃあ、「問題解決のために努力している」のではなく、単に自分や他人を責めているだけ。
正しい努力のしかた
本書では「努力が報われない本当の理由」を説いて、「正しい努力のしかた」を提案している。
ふつうの人は問題解決のために何らかの「努力」をしていないと精神的に落ち着かない。
例えば、受験勉強を一切せずに「心の平静を保ったまま」ぶっつけ本番で試験を受けるようなことはできない。
どんな心構えで努力をすれば「努力が報われない!」と絶望せずにすむのか。
詳細は本書を読んでほしい。