清少納言の『枕草子』を読んでいると、第74段に「あぢきなきもの」というエピソードがあった。
「日本人は平安時代から会社が嫌いだったんだな」と思った。
当然、当時は「会社」という組織はなかったから「宮仕え(役所勤め)」になるのだけど、「組織で勤める」という意味では「宮仕え=会社員(サラリーマン)」とみなす。
自分で志望して宮仕え(サラリーマン)になったのに、仕事が嫌になって、面倒くさく思っている。
そんな平安時代のサラリーマンを見て、清少納言が「あぢきなきもの」と評した。
「あぢきなきもの」とは、
おもしろくない、にがにがしい、困った、今さらどうしようもない、筋道に添っていなくて無益だ、などの不快感を形容する。
という意味だ。
本文を見てみる。
あぢきなきもの。わざと思ひ立ちて宮づかへに出たちたる人の、物憂がり、うるさげに思ひたる。
現代語訳は、
今さらどうしようもないもの わざわざ決心して宮仕えに出た人が、宮仕えをおっくうがり、面倒くさそうに思っている。
日本人が会社勤めを嫌がるのは1000年以上続く「伝統」なのだ。
引用元:『枕草子・上』(講談社学術文庫 1999)