最近は、毎日早朝「哲学書」を読むようになった。退職して朝をゆっくり過ごせるようになったためだ。
今は「ヘーゲル」を毎朝少しずつ読み進めている。
「ヘーゲル」を読むようになったきっかけは、サラリーマン時代に読んだ、丸田潔『お金がたまる人 たまらない人―なぜあの人はお金がたまるのか』の、
株式投資の達人の愛読書はヘーゲル
というコラムに触発されたためだ。本書で紹介されている「株式投資の達人」は、人前では投資の話はあまりせず、読書が趣味で別荘にはヘーゲル全集が並んでいたとのこと。
株式投資の成功者は読書家?
ヘーゲルの本を読む→株式投資に成功する
という単純な法則は成り立たないのはわかっていたが、いつか読んでみたいなと思っていた。ヘーゲルは難解な哲学者というイメージが強いが、著書のなかではお金や財産についてのよく語っているそうだ。
財産は自由の最初のすがたであり、それ自体がかけがえのない目的です。(略)財産を持つことは、わたしの自由が社会的に認められるためであって、それこそが理性の絶対の関心事です。
ヘーゲル『法哲学講義』長谷川宏訳・作品社
「自由になりたければ貯金しろ。貯金があれば誰からも批判されずに好きなことができるぞ。だから俺の一番の関心事は貯金だ」
ヘーゲル先生はこう言いたいのだとわたしは解釈した。
今読んでいるヘーゲル本
現在読んでいるヘーゲルの著作は『歴史哲学講義』(岩波文庫)。まだ読み始めたばかりだが、世界史・哲学・宗教について一挙に学べる、効率的かつお得な本だ。日本語訳も読みやすく、難解な言葉はないので哲学の知識は不要だ。
世界的事件の渦中にあっては、一般原則も、類似のできごとの記憶も、なんの役に立つはずがなく、というのも、色あせた記憶をもってしては、生気と自由にあふれた現在にとても太刀打ちできないからです。この点からすると、ギリシャやローマをひきあいに出すという、史上にくりかえされ、フランス革命の際にもよく見られたこころみほど、無意味なものはない。古代のギリシャ・ローマ人と近代人とはその性格がまったく異なるのです。
ヘーゲル『歴史哲学講義 (上)』 (岩波文庫)
過去の戦争やバブルの歴史を学んで再発を防止するというのは不可能なのだということがわかる。現代人は現在進行中の事件に対応するだけで手一杯なのだ。「歴史に学べ」と言っている人は、誤解を恐れずに言うと「ヒマな人」なのだ。
哲学を勉強するためではなく、投資家がカネを投じている「世界」を俯瞰するためにヘーゲルを読む。こんな実利的な読み方があってもいいのではないか。