中原英臣・佐川峻『数字のウソを見破る』 (PHP新書 2009)を読んだ。
健康診断の「正常値」のような医療データ、食品のカロリー表示、医師国家試験の合格率、テレビの視聴率など、身近に接している「数字のウソ」がわかるいい本だ。
特に印象に残ったのが「日本人は無駄ながん検診ばかり受けている」こと。
無意味な「がん検診」
本書によると、がん検診のうち、「肺がん検診」、「乳がん検診」については効果がないとのことだ。
アメリカの権威あるクリニックが、肺がんの死亡率を調査した。
結果は、「肺がん検診」を受診したグループも、受診しなかったグループも、死亡率に差はほとんどなかった。
乳がん検診については、年に1回「乳がん検診」を受診するより、毎月1回「自己検診」した方が効果は高いらしい。
乳がんは検診を受診するより自己検診ですよ。
意味のある「がん検診」
ただし、「子宮頸がん検診」については医学的に効果があるらしい。
そのため、欧米では受診率は高く、アメリカでは83%、ヨーロッパ各国では70%以上とのこと。
しかし、日本では受診率は24%と低い。
どうして無意味ながん検診が存在するのか?
なぜ日本人は医学的に効果がないがん検診を受診するのだろうか?
本書によると「がん検診」を受診して「異常なし」と言われることで安心するためだ、という。
わたしは「医療費の予算を消化するため」というお役所的な理由もあるのではないかと思う。
がん検診をはじめ、健康診断には莫大な予算がつけられているはずだ。
単に検診の受診者に「科学的な裏付けのない安心」を与えるために血税が使われている。
日本の医療費は年々上がり続けているが、本当に意味のある医療に使われているのか??
という疑問が本書を読んでさらに大きくなったと同時に、「社会保障に消費税を使う」と称して消費税増税する意味があるのかという疑問も大きくなった。
<参考>
科学的根拠に基づくがん検診推進のページ (国立がん研究センター)
広島がんネット (広島県)