サラリーマン時代は「会社が嫌になったから早期リタイア」という行動は「少々短絡的な行動」と思っていた。
「もうちょっと将来を冷静に考えろよ」、とツッコみたくなるような行動なんじゃないかと。
自分が早期リタイアしておきながらこんなこと言うのは何ですが……。
しかし、養老孟司『バカなおとなにならない脳 』(イースト・プレス, 2011) を読んで、「会社が嫌いだから早期リタイア」というのは「意外に合理的」なんじゃないかと思うようになった。
ストレスが多いから辞めたい
本書は、小学生・中学生の悩み事相談に著者が回答するという形式になっている。
その中に「ストレスが多すぎて……」という悩み事があった。
ある中学生からの相談だ。
彼は「対人恐怖症」で心療内科に通院しているらしい。他人と関わることが非常に大きなストレスになっている。
家族は理解してくれない。友人はおらず、学校に行くのが辛い。
「ストレスの多い世界をどう生きていけばいいでしょうか。どうやって他人とうまく付き合えばいいのでしょうか?」という悩みだ。
これって「学校に行くのが辛い」を「職場に行くのが辛い」に置き換えれば、そのまま大人にもピッタリ当てはまる。
日本の数千万人のサラリーマンが抱えているであろう悩み事の答えが本書に書いてある!
回答の冒頭にこう書いてある。
ああ、本当に多いね。こういう悩みが……
どうして誰も教えてやらないんだ。
人間だけが世界じゃないんだ、って。
p. 93
わたしも本書を読んではっと気づいた。
そうだ、世界は人間だけじゃないんだ、と。
会社が人生のすべてではない
職場、特に「会社に行くのが辛い人」というのは「会社が人生のすべて」だと誤解しているんだ(わたしも誤解していた)。
サラリーマン時代はずっと「会社の人間関係がすべて」だと思い込んでいた。
だから、「会社の人間関係がどうすれば良くなるか」ということばかり悩んでいた。
コミュニケーション能力が足りないとか、空気を読まなければならないとか、無理にでも飲み会に出て作り笑いしなければならないとか、どうでもいいことで悩んでいた。
本当は会社なんて、人生のほんの一部なのに。
でも、会社にいる時は「会社が人生のすべて」としか思えなかった。
「会社が人生のすべてはない」ということは早期リタイアしてやっとわかった。
早期リタイアは人間として理にかなった行動
本書を読めば、会社が嫌で早期リタイアして、例えば地方に移住したり低コストライフを満喫したりする行動は「合理的」であることがわかる。人間として非常に理にかなった行動なのだ。
早期リタイアというのは万人におすすめできる方法ではないのはわかっている。
資金の問題、家族の合意、世間体など、課題はある。
でも、合理的なのだ。
人生を会社の仕事に入れ込みすぎて「バカなおとな」になる前に読んでおきたかった1冊だった。
学校が行くのが嫌な子供と会社に行くのが辛い親が親子で読んで話し合えば、人生がもっと楽になりそうな本だ。