齋藤学『「自分のために生きていける」ということ~寂しくて、退屈な人たちへ』(大和書房 2004)を読んだ。
本書タイトルの「自分のために生きていける」に惹かれたからだ。
会社を早期退職してセミリタイア生活に入ったのはまさに「残りの人生、自分のために生きていきたい」と思ったからだ。
男らしさアイテム
本書によると、母親にとって「良い子」で生きてきた男の子は、自分なりの「男らしさ」を育てるために親から吹き込まれた「男らしさ」を求めるために「ロボット的な男らしさ」を追求するようになる。
彼らは筋肉を鍛えたり、知的、性的な能力で「男らしさ」という
鎧 をまといます。アルコールやドラッグ、自動車、学歴、あまり人が知らないフランスの哲学者の名前や通 な店など、「男らしさアイテム」を一所懸命そろえます。自分なりの目標が設定されていて、それに向かって追求しているのなら楽しいのでしょうが、そのほとんどは「他人にバカにされたくない」という不安が根っこにあります。
p.88
学歴、職業、年収、資産、役職、見た目、身長、健康、クルマ、恋愛、家族、マイホーム、知識などなど……これらは「持っていないとバカにされる」と洗脳されて集めさせられる「男らしさアイテム」だ。
特に問題なのが、男が「”男らしさアイテム”がないと女性にバカにされる、相手にしてもらえない」と思い込んでいることだ。
実は、女性は「”男らしさアイテム”を必死に集めて男らしさをアピールしようとしている男性」に寂しさを感じているケースのほうが多いらしい。
「男らしさアイテム」を集めるのは苦痛
男の方も実は「男らしさアイテム」を集めるのに疲れている。
負けずに努力している男性たちのほうも息苦しい思いをしている。こんな無理を重ねているのが、今の社会の中で適応的な男であり、勝者とみなされている男たちです。そして、こうした男たちの無理を救うのは、彼らにとっての新しい「お袋」である企業です。会社こそ、おおかたの日本の男たちにとっての母なのです。
p.89
受験競争を勝ち抜いた男たちが次に「男らしさアイテム」を集めるためにやることが「出世競争に勝ち抜いて、第2の母親である”会社”に認めてもらう」ことだ。
もし、競争に勝ち抜いて会社という「母親」に認めてもらえれば「昇進・昇給」という「母乳」を与えてもらえる。「おーよちよち、ぼくちゃんよくやりまちたねー」と言われながら。
でも、認めてもらうためには膨大なエネルギーが必要だし、大きなストレスも抱える。
最近は組織のリストラで企業はスリム化して管理職ポストが減っているため、”会社”という母親に認めてもらえる男の数も減っている。
どうすればいいのか。
わたしの場合は早期退職という道を選んだ。
無駄な努力と出費をやめ、自分のために生きるために。
メリットが少ない「アイテム集め」はほどほどにして、そろそろ自分のために生きていくことを考えないと、時間がもったいない。
本書は男らしさ(女らしさ)をアピールするのに心身もサイフも疲れ果てている人におすすめの一冊だ。
目次
第1章 「退屈」に耐えられず、何かにすがりつく心
第2章 人はなぜ、自分の「欲望」を見失うのか
第3章 「寂しさ」の裏にひそむ「怒り」をくみ出せ
第4章 あなたの「インナーチャイルド」の声に耳を傾けよう
第5章 パワーゲームを降りて「魂の家族」をつくる
第6章 「一人でいられる能力」が「親密な関係」をきずく