「早期リタイアしたってどうせ退屈に決まってるから仕事した方がいい」という主張に反論しているのが日本の隠遁者のバイブル『徒然草』だ。
どこで反論しているかというと、「早期リタイア退屈論」に対して理論武装するための『徒然草』第75段だ。
「退屈は悪」という説に反論している(日本人は大昔から退屈を悪者扱いしていたのだ)。
『徒然草』(ちくま学芸文庫)から現代語訳を引用する。
何もすることがなくて退屈であるという状態を嫌に思う人は、いったいどういう心なのだろう。雑事に紛れることなく、ただ一人で静かに過ごすのこそがよいのに。
p. 156
退屈は楽しい
兼好法師の主張(疑問?)は「なぜ多忙を賛美するの?退屈のいったい何がいけないの?一人で読書したりして静かに過ごすのってこんなに楽しいのに」ということだ。
『徒然草』を読むと、兼好法師が本書を書いたと思われる鎌倉時代から「退屈=悪」という思想があったことがわかる。
多忙のデメリット
単に「退屈でもいいじゃない」と言うだけでは論理的な反論になっていないので、『徒然草』では次のように「多忙な仕事生活」のデメリットを3つ挙げている。
- 他人の発言に左右されて、心が動揺する
- 他人と競争して、結果に一喜一憂する
- お金を儲けたとか損したとか、利害得失への執着で心が苦しくなる
このようなストレスだらけの多忙(多く心を亡くす)な人生からさっさと足を洗って、一人でのんびり過ごすことが「人生を楽しむ」ということなのだ。
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今後、「早期リタイアしたって退屈(だから仕事しろ)」という主張をされてイラッとしたら「『徒然草』の第75段を読んでください」と切り返せばいい。