父が子に(気乗りしない?)家族旅行を延期する理由を説明するのに「数学」が役に立つかも。
寺田寅彦『箱根熱海バス紀行』(青空文庫)を読んだ。
著者が子供たちと箱根と熱海へバス旅行したことを記したエッセイだ。
2月頃に「熱海へ家族旅行しようか」という話がでたのだが、天気が悪かったり家族の都合が合わなかったりして4月20日の日曜日まで延期したそうだ。
著者の寺田寅彦博士は、延期した理由を数学の確率を使ってこう説明している。
日曜に天気のいいという確率、家族の甲乙丙の銘々が暇だという三つの確率、この四つがそれぞれ二分の一ずつだとしても、十六分の一しか都合のいい日の確率はない訳であるから、統計的に云えば思い立ってから平均十六週すなわち約四ヶ月待たなければならなかったとしても大して不思議はない勘定である。
つまり、天気がいい確率が1/2、家族3人がそれぞれ都合がいい確率1/2だとすると、旅行を決行できる確率は、
$$\frac {1}{2}\times \frac {1}{2}\times \frac {1}{2}\times \frac {1}{2}=\frac {1}{16}$$
だ。
日曜日に家族旅行できる確率が1/16だから、16週間あれば1回くらいは行けるだろうということだ。
家族旅行できる確率は意外に低い
ただ、16週間のうち少なくとも1回旅行へ行ける確率は、
$$1-(\frac {15}{16})^{16}≒0.643$$
となり、約64.3%だ。
つまり、行けない確率が35.7%(= 1 – 0.643)もある。
家族旅行できる確率が1/16なので、できない確率は15/16となる。
実際に組み合わせを数えてみると次表のように16通りある。
組み合わせの要素は「天気」「父の都合」「子供1の都合」「子供2の都合」だ。
4つの要素がすべて「○」になったときだけ家族旅行ができる。
ひとつでも「×」だと中止となる。
16通りのうち15通りが「旅行できない(中止)」なので、旅行できない確率は15/16となる。
16週間連続で1回も旅行できない確率(15/16の16乗)を1から引くと、少なくとも1回旅行できる確率を64.3%と求められる。
99%旅行できるには何週間待たされるか
では、99%超の確率で「ほぼ確実に」旅行するには何週間待てばいいのか。
x週間待てば旅行できる確率が99%を超えるとすると、
$$1-\left( \frac {15}{16}\right) ^{x} >0.99$$
$$-\left( \frac {15}{16}\right) ^{x} >-0.01$$
$$x >\log _{\frac {15}{16}}0.01≒71.3553…$$
つまり、最大72週間(「1ヵ月=4週」とすると1年半)待てば(72週以内に)旅行できる確率が99%を超える。
検算してみると、
$$1-(\frac {15}{16})^{72}=0.990407498$$
となり、旅行できる確率が99%を超えた。
▼参考サイト
対数関数 – 高精度計算サイト
<2018.2.18追記>
上記の組み合わせの表に一部誤りがありました。お詫びして訂正します。ごめんなさい。
【誤】
【正】
組み合わせ「○×○×」をダブって2つ記載していましたので、ひとつを「○×○○」に訂正しました。