以前、当ブログで、
という記事を書いた。
『会計士は見た!』(前川 修満(著), 文藝春秋, 2015) という本に大阪のメーカー「キーエンス」の決算が紹介されていた。
キーエンスの経営姿勢が「セミリタイア生活の理想型」に近かったので、思わず記事にした。
当然ながら、経営姿勢はバランスシート(貸借対照表)に現れる。
今回はキーエンスの最新の有価証券報告書に掲載されているバランスシートを「鑑賞」して、理想的なセミリタイア生活について語る。
キーエンスのバランスシート
早速、キーエンスの最新のバランスシート(2020年12月20日)を見てみる。
出典キーエンスHP「四半期報告書第52期第3四半期 (2020年9月21日-2020年12月20日)」
鑑賞ポイントは3つ。
- 現預金がタップリある
- 保有している有価証券はほとんどが低リスク
- 借金が少ない
わたしは、上記3つが「セミリタイア生活の理想」だと思っている。
理想①:現預金がタップリ
バランスシートのいちばん上にある「現金及び預金」を見てほしい。
450,539百万円(4,505億円)ある。
これは総資産1,906,784百万円(1兆9,067億円)の23.6%もある。
さらにすばらしいのは現預金が借金(負債)62,823百万円(628億円)の約7倍もあることだ。
つまり、すぐに「借金チャラ」にできる能力を持っている。
現預金がタップリあるから「お金に困っていない」。
「お金に困らない」のはセミリタイア生活の最も重要な「理想」だ。
理想②:低リスクな資産運用
次に見たいのは「有価証券」だ。
バランスシートの資産にある「有価証券」「投資有価証券」の合計は1,222,386百万円(1兆2,223億円)だ。
総資産の64%が有価証券だ。
が、ほとんどは「低リスクな債券」だ。
当社グループは、安全性の高い債券等の金融資産で運用しています。
出典キーエンス「有価証券報告書第51期 (2019年3月21日-2020年3月20日)」
債券は大きな利回りは期待できないが大損するリスクも少ない。
余裕のある資産運用だ。
『会計士は見た!』によると、キーエンスは「禁欲的な会社」だそうだ。
「現預金」や「低リスクな金融商品」をタップリ持って、「投資の誘惑」に負けて「ハイリスクハイリターン」を狙いにいかない。
株のデイトレードのような無理・無謀な投機をしなくてもお金に困らない……これもセミリタイア生活の理想だ。
理想③:借金が少ない
最後は「借金の少なさ」を見てみる。
負債は62,823百万円(628億円)だ。
総資産の3.3%しかない(628 ÷ 1906784 = 0.0329)。
つまり資産のほとんどが自己資本だ。
「借金が少ない」というのもセミリタイア生活の理想だ。
理想というより「必須」といってもいい。
セミリタイア生活では借金していいのは「クレジットカードの1回払い」だけだ。
住宅ローンがあったとしたら「退職前に完済」が理想だ。
まさか、セミリタイア生活を送りながら「リボ払い」や「カードローン」に手を出す人なんていないと思うが。
※上記は2021年3月23日現在の情報です。