『老後貧乏にならないためのお金の法則』(田村 正之(著), 日本経済新聞出版社, 2015) を読んだ。
本書では「老後貧乏」とは「死ぬ前に老後資金が枯渇する状態」と定義する。
著者は「普通の夫婦」を想定して何度もシミュレーションした結果、平均的な年収の会社員は「老後貧乏」になる可能性が高いという。
老後貧乏の可能性を上げる要因は次の4つだ。
- さらなる長寿化
- 年金の実質減額
- インフレ
- 金利の抑圧
本書の目的はタイトルのとおり「老後貧乏にならない」つまり、「死ぬまで老後資金に困らない家計」を築くことだ。
一通り読めば、「資産運用」「医療と保険」「住居」「年金」「相続」についての基礎知識を身に付けることができる。
本書に書いてあることを実践できれば「老後貧乏」は回避できそうだ。
少なくとも「大きな金銭上の失敗」はせずにすむと思う。
資産運用
バブル崩壊前のように、「マイホーム購入という不動産投資」で資産を築くことが難しくなってしまった。
よって、これからはまとまった金融資産を築くには株式投資が「必須」となる。
給料をコツコツと積立貯金するだけでは厳しい。
本書で個人的に興味をそそられたのは”ドルコスト平均法に勝つ「最強積立術」”だ。
知っている人はよく知っている「あの積立投資法」だ。
医療と保険
「医療と保険」の面でどうやって「老後貧乏」を防ぐかといえば「健康でいること」だ。
あと、生命保険で浪費し過ぎないこと。
医療費が高額になってしまったら「高額療養費制度」を必ず使って医療費を取り戻すこと。
確定申告の「医療費控除」ももちろん使う。
持ち家vs賃貸
よくある「持ち家と賃貸はどっちが得か」論争について。
マイホームを買ってしまうと、住宅ローンの返済が苦しい。
収入が大きく減る60歳時点で、1000万~2000万円もの住宅ローンが残っている人が増えている
p.198
とはいえ、一生「賃貸」だと、死ぬまで家賃を払い続けなければならない。
悩ましい。
本書では「持ち家」と「賃貸」どちらに軍配を上げているか……これは「本書を読んでください」としかいえない。
「持ち家」「賃貸」どちらを選んでも住居費というのは支出全体のうち大きな割合を占める。
逆に言えば、住居費は金額が大きいゆえにコスト削減ができれば「節約効果」が大きい。
本書では、「持ち家派」のコスト削減ノウハウが多数紹介されている。
年金
年金を増やす方法について。
個人事業主なら「付加年金」「国民年金基金」「小規模企業共済」「確定拠出年金」に加入する。
ただし、国民年金基金に加入したら付加年金を納入することはできない。
わたしは付加年金でなく国民年金基金に加入している。
予定利率は1.5%だ。
もし、インフレで高金利になったら損する。
国民年金基金は「インフレ・高金利にならなかった場合」の金融商品と割り切っている。
相続
本書によると、相続で引き継がれる資産は年間約50数兆円と試算されている。
日本国の年間の税収に匹敵する資産が毎年相続だけで発生している。
もし、多額な相続ができれば、「老後貧乏問題」が一挙に可決できる?
ただし、「相続財産依存」は「9回裏逆転満塁サヨナラホームラン」を狙うのと同じだから、相続財産をアテにしての老後資金のシミュレーションはしないほうがいいと思う。
「うまい相続の仕方」に関するノウハウについては本書に詳しい。
※上記は2016年5月2日現在の情報です。年金制度等の法律は最新の情報を参照してください。