『お金の流れで見る戦国時代 歴戦の武将も、そろばんには勝てない』(大村大次郎(著), KADOKAWA, 2016)を読んだ。
戦国時代といえば武将たちの戦いがクローズアップされるが、本書は「お金」「経済」という観点で戦国時代を眺める。
つまり、戦争を「投資」の一種と見るのだ。
戦国武将たちがどうやって戦費を調達して、「戦争」という投資を行って、リターン得たのか。
もしくはノーリターンのまま退場していったのか。
投資家が面白く読める本だ。
カネがなければ戦はできぬ
本書を読んでわかるのは、「貧乏な武将は必ず負ける」ということ。
例えば武田信玄。
「戦国最強の騎馬軍団と優秀な家臣団を擁して、天下に号令する一歩手前までいったが、信玄が病死したために夢が潰えた」というイメージがある。
しかし、「経済」という観点から見ると、フトコロ事情は悲惨で、とても「戦国最強の騎馬軍団」でなかったことがわかる。
常に金欠状態で、信玄の晩年はマトモに戦える軍事力はなかったらしい。
金持ちでもカネを使わなければ宝の持ち腐れ
かといって、金持ちの武将が必ず成功するわけではない。
例えば、上杉謙信。
主要な収入源は港と金山だった。
柏崎や直江津という良港からの関税収入や、佐渡を代表とする金山からの収入で莫大な財産を持っていた。
しかし、謙信は貯め込んだお金を使わなかった。
天下を取るには稼いだお金で軍事力を増強して対外戦争で領土を拡大しなけばならない。
でも、謙信はお金を使わずに貯め込んだまま、天下に号令することなくこの世を去った。
謙信の死後、居城の春日山城から莫大な貯金が見つかった。
リスクを取らずに日本史上最大の成功者になった家康
本書で一番面白かったのが「リスクを取らない投資法で日本史上最大の成功者になった徳川家康」だ。
織田信長、豊臣秀吉のように自分から積極的に行動しなかった。
リスクを取らず、今川義元、織田信長、豊臣秀吉といった「ライバル」が勝手に自滅するの辛抱強く待つ方法で大成功した。
敵が弱っているときにこれを叩けば、あまり費用を掛けずに領土を拡張できる。味方の損害も少ない。いいことづくめである。
p.225
戦争という「投資」で無理をせず、自分の「運」を信じて待っていると、リスクを取って行動しまくっているバカが勝手にコケてくれる。
コケたところを最小限の出費で短時間で攻めまくり、利益をちゃっかりいただく。
リスクを取らず、出費は最小限でケチに徹した者が日本史上最大の成功者となった。
面白い。
ふだんは質素な生活を送り、大量の現金を握りしめながら、株価の暴落をひたすら待つ投資家のようだ。